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【Monogragh】胸さわぎの熱い夏を満喫するために(5)
Kenji Yanobe, Atom Suit Project, 1997 and Ben Shahn, Lucky Dragon, 1960
本展では、当館所蔵のアメリカ人画家ベン・シャーンの《ラッキードラゴン》(1960年)をヤノベの展示室の中に展示した。シャーンの作品には、無くなった久保山愛吉のグロテスクな姿が、堂々と中央に描かれている。ベン・シャーンとヤノベ、時代も文化も異なる二人の作家のドラゴンが、ちょうど50年という時を経て競演する。ラッキードラゴンが新たな意味を獲得するまでにそれだけの時間が必要だったということになるだろうか。一方、二人の作家のアートと社会のあり方への問題意識の先鋭化の背景には、そうならざるを得ないどこか共通する差し迫った社会状況があるといえるのかもしれない。
Kenji Yanobe, Lucky Dragon
Kenji Yanobe, Giant Torayan
最後に《ジャイアント・トらやん》について触れたい。子供のいうことしか聞かないというこの巨大なトらやんは、アトムスーツを着たとぼけたトらやんと印象を異にする、ただ大きいというだけではなく、全身在るミニ包まれ白い目を光らせて不思議な声を出す《ジャイアント・トらやん》は、可愛くもあるが不気味でもある。シャーンの久保山像には、被害者としての人間像と加害者としての人間像が重ね合わされているのではないと筆者は考えているが、《ジャイアント・トらやん》もまた、愛嬌をふりまく救世主的な側面と、火を噴く凶暴性を併せ持っている。表裏一体の危うさ、二面性を抱えた《ジャイアント・トらやん》は、現代の人間像を象徴しているといえるかもしれない。
地に足をつけ、現実や人間をしっかりと見つめながら、ヤノベの妄想はこれからとてつもないところへ向っていくのだろう。
images:『胸さわぎの夏休み』(2010、福島県立美術館)会場風景 / Installation view : Munasawagi no Natsuyasumi, 2010, Fukushima Prefectural Museum of Art / photo: Reiko Tsukamasa
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Text: 荒木康子「胸さわぎの熱い夏を満喫するために」より, 展覧会図録『胸さわぎの夏休み』, p.80-81 (2010, 福島県立美術館)
注) 【Monogragh】胸さわぎの熱い夏を満喫するためにへの掲載資料写真と、展覧会図録『胸さわぎの夏休み』での収録・掲載写真は異なります。