Ogaki Mini Maker Faire 2018
Date: 2018/12/01(Sat.)~12/02(Sun.) @ソフトピアジャパンセンタービル
僕が岐阜県で開催れるものづくりの祭典Ogaki Mini Maker Faire(以下OMMF)に出展したのは今回で二度目で、前回は2016年に開催された時にIAMASの学生として出展しました。前回の出展では、自己紹介的に自分の制作した楽器をずらーっと並べて展示しましたが、今回はもっとターゲットを絞って、今年メインに制作した「NB-606」という作品を展示しました。
NB-606は車のウィンカーの点滅のずれに着目した作品で、ビジュアルは楽しそうですが体験自体は大変地味な作品です。今までもMaker Faireで展示してきましたが、来場者の反応は賛否別れます。面白いと思う人は何度も体験して着眼点の面白さを受け入れてくれますが、ウィンカーのタイミングのずれに面白さを見出せない人は全く受け入れられません。作品としては、今までウィンカーのずれという現象に面白さを感じなかった人たちに面白さを気づかせる作品にならないといけないですが、まだ作品の強度がそこまで到達していません。これからの課題です。
作品の体験が地味ということもあり、今回の展示ではプレゼンテーションのイベントに参加しました。ブースでの体験だけで判断するのでなく、作品が作られる背景を知ってもらうことでNB-606で目指した「グルーヴとは何か?」の議論が深まると期待しました。
今回の展示では新しいグッズとして、Tシャツとステッカーの開発を行い、会場で物販ができるCommercial Makerという立場で出展しました。Commercial Makerは展示するだけのMakerと違って出展料に1万円かかるため、これまではMakerとして出展していました。ただダン&レイビーの「スペキュラティヴ・デザイン」※1ではお金を使う体験の効果を説明しており、「購入できるプロダクト」というのは作者のコンセプトに消費者が賛同することが可能です。例えば、フェアトレードされたコーヒー豆を選んで買う人は公正な取引きが行われる未来像に賛同して少し高いフェアトレードのコーヒー豆を購入していると言えます。つまり、買う側の人間も企業の提供するサービスを消費するだけの受け身の存在ではなく、「何を買うか」と選択することを通して主体的に社会形成に関われるということです。反対に売る側の人間は、買う側の人間が選択できる多様な未来像を提供することを意識して製品開発に臨むべきでしょう。
この考えからできる限り僕の作品は「買える・使える状態」を目指して開発しています。今回の展示では販売する楽器を準備できませんでしたが、Tシャツやステッカーを購入して僕の活動自体を応援できる状態を目指しました。
これまでのオリジナルTシャツはライブシャツをイメージしてユニクロの黒シャツにシルクスクリーンでPLAY A DAYのロゴを印刷していましたが、少し男性的なイメージが先行していたので、今回からはZineで描かれている女の子や子供のイラストをメインに配しました。デザインにあたってはデザイナーの丹羽彩乃さんにお願いしました。
ステッカーもこれまではシルバーの紙に印刷した小さなステッカーがありましたが、今回はユーモア商品として僕のマルチステッカーを作りました。とてもマニアックで誰がターゲットかわからない商品ですが、そんなPOPでありながら狂気溢れる雰囲気もPLAY A DAYのイメージにあるので、コンセプト商品として販売しました。
さらに当初はライブパフォーマンスの出演は考えていなかったのですが、OMMFの運営側からライブへ誘っていただきました。あまり人からライブに誘われること自体が少ないので、今回もライブに出演することにしました。
ライブの内容を考えるなかで、ものづくりの祭典ということでフルカラーLEDやプロジェクションによる派手なパフォーマンスが多いと予想しました。僕は以前からMaker Faireに蔓延る「目立ったもん勝ち」の雰囲気に問題意識を抱えていました。私たちはDIYの「ものづくりを通して自らの生き方を内省する態度」をもっと大事にすべきです。
私たちの世界は様々なものによって構築されているからこそ、ものを作ることは世界を作り変えることであり、個人の手の届く範囲でものを作ることは自らの生き方を自ら作り変えることなのです。これがDIYの基本態度であり、Maker Faireでも意識されるべきです。NB-606という地味な体験の作品を展示した意図も、僕のMaker Faireに対する問題意識が反映されています。一見するとなんの役に立たないものも、ものを作る行為を通して作者本人の世界を作り変える点で役に立っているのです。
そうした考えから、シンプルな仕組みを用いて見た目には地味だけど聴覚的に複雑に感じるパフォーマンスを目指しました。具体的には、生活の中でゴミとして扱われる空き缶をモータで共振させて高音を鳴らすシステムを会場内に複数個設置することで、空間内の共鳴や観客の聴く位置によって音が複雑に変化すると考えました。
展示場所はサウンド・自作楽器系があつまるブースの近くで、隣のブースはサーキットベンディングで有名なKaseoさん※2でした。Kaseoさんとは昨年の秋に岐阜のFab施設「スケッチオン」で開催されたKaseoさんのトークイベント※3で出会いました。反対側の隣のブースはIAMASの現役生が運営するクラブ系のプロジェクトNxPC※4でした。NxPCは僕がIAMASの学生だったころに樽見鉄道でのライブ※5や地下駐パーティーなどの色んな機会をいただきました。またKaseoさんの隣はゲームボーイのサーキットベンディングで有名な谷浦朋文a.k.a世紀マ3さん※6でした。谷浦さんとはKD Japonでの共演以来、サウンドパフォーマンスプラットフォーム※7などで一緒に活動することが多い仲良しさんです。スケッチオンでのKaseoさんのトークでもお会いしました。そんな良く知った人たちに囲まれて幸せな展示を行いました。
初日はプレゼンテーション・イベントに参加しました。3月のMTRL KYOTOで行なったプレゼン資料をベースにOMMFバージョンに改良しました。プレゼンの機会を重ねることで作品のプレゼン資料が充実していくことを体感したので、今後もプレゼンの機会があれば積極的に参加したいです。
プレゼンブースでは当初お客さんが一人も居なかったので不安でしたが、プレゼン前になると10人ほどが聞いてくださいました。プレゼンではNB-606の問題意識から制作過程、考察まで述べ、さらに先に述べたMaker Faireの「目立ったもん勝ち」への問題提起も行いました。初めはコンセプトが理解されるか不安でしたが、プレゼン後の質疑応答ではいくつか質問があり手応えを感じました。質問の中身としては「ウィンカーの制御は厳密に行なっているのか?」「車の台数は難題が適切か?」という質問でした。
初めの質問に対しては、アナログの電子回路を用いているため厳密にウィンカーの点滅をコントロールすることはできないと答え、ボタンを押して体験するたびにウィンカーの点滅パターンが変わることを説明しました。
二つ目の質問に対しては、人間は「3つ以上の現象は同時に処理できない」との考えと、Roland社のリズムマシーンTR-808へのオマージュとなるように車のカラーリングを4色とし、現状では車の台数は4台で設計している旨を説明しました。現象の同時処理については、クワクボリョウタさんが「10番目の感傷」を設営するなかで影が3つ同時に交差しないように配置しているとの話を聞いて、鑑賞者を作品に導入したり混乱させたりする際に意識するようになりました。今回の作品では、3台のウィンカーが点滅するまでは音と光の関係性を把握できるものの、4台同時に動作すると追えなくなり鑑賞者は音を頼りにグルーヴを感じることになります。
今回のプレゼンイベントでは来場者から質問が出たのは僕が初めてだったそうです。そういった意味では作品のコンセプトがうまく伝わったようで良かったです。
OMMF2018の2日目は午前中からオープンしました。昨日に比べて午前中は来場者が少ないので、このタイミングに他の出展ブースを見にいきました。
今回の展示ではIAMAS関係者が多く出展しており、同級生のブースもありました。エムノ※9はハードウェアデザイナーの宮野有史とソフトウェアデザイナーの松野峻也からなるユニットです。エムノとは今年の大阪で開催されたMakers Bazaar Osaka 2018※10で販売していた「CHAKUYO-BAKO」の改良版を展示していました。今回の展示品では、新しく購入した光造形式3Dプリンターでケースを出力したそうです。制作の様子はエムノのホームページ(https://emno.work)で見ることができます。
また特別支援学校内で3Dプリンターなどを使って教員や当事者が自ら自助具を作る活動を支援する団体「教材自作部」※11の展示もありました。教材自作部は同級生の篠田幸雄さんが運営する団体です。今回の展示では音符の形と音の長さを体験する道具が新たに展示されていました。
障害福祉施設への出入りを繰り返すうちに、障害に合わせた製品への多様なニーズがあることに気づき、それらのニーズを叶える手段としてデジタルファブリケーションに着目したそうです。例えばハサミのデザインについて考えると、障害者によって握力の個人差が大きくあり、個人の身体性に合わせた製品開発は一般企業では対応できません。そこで様々な握力に調整可能なハサミを開発して、製造データを共有すれば、障害者個人に合わせた道具が入手できるようになるのです。
決してキャッチーな活動ではありませんが、個人的な気づき(障害者のたようなニーズと手段としてのデジタルファブリケーション)を起点とした篠田さんのものづくりは、僕の考えるDIYの態度「ものづくりを通して自らの生き方を内省する態度」を実装した良い活動です。実際の現場に足を運びながら新しい作例を生み出す教材自作部の活動に今後も注目していきたいです。
またIAMASの後輩たちも多く展示していました。全部は紹介できませんがいくつか紹介すると、僕の一つ下の学年で卒業した加藤明洋さんの「TRUSTLESS LIFE」※12はブロックチェーンをテーマにしたボードゲームです。ブロックチェーンの技術への理解はもちろん、ブロックチェーンが普及した際の「信頼」をベースにした身の振り方などが体験できるそうです(ちょっと難しくて、僕はシステムをすぐに理解できませんでした。)。最近はいろんなデジタル系コンペで受賞していて1日目もISCAの展示で神戸に行っていたそうです。今後も活躍して欲しいです。
IAMAS在校生の展示ではヒョロ・ちび・wifeの「ブンブンビンビンブン」※13という作品がありました。この作品では3人の在校生が制作に関わっており、それぞれが得意なプログラム・音響・アニメーションを組み合わせたものです。
アニメーションの中ではベルトコンベアにシシトウが流れており、映像の中の作業員はシシトウ以外のものを取り除く作業をしています。時々ピーマンが流れてくるので、鑑賞者はボタンを押して作業員にピーマンを取り除く命令を出します。ループアニメーションの中に鑑賞者がインタラクティヴに関わるシステムはUnityで制作しているようです。
自身もIAMAS在籍時は他の分野の学生とコラボして活動していたので、昔の自分と重ねて見ていました。また作品コンセプトを伝えるために小冊子を用意しており、これも自分がZIneを作っていることと重なり印象的でした。展示も謎な人型パネルがあって奇妙でした。
2日目はNxPC Lab.のパフォーマンスイベントがあり出演しました。当初はミニマルな展示で運搬する道具も少ないと思っていたのですが、パフォーマンスの機材を準備していたら結局いつもと同じ量の道具になってしまいました。
今回は道具の量を減らすためにプラレールと洗濯台という2つのメイン機材を使いませんでした。その代わり、最近実験している空き缶をモーターで擦ってドローンを鳴らすシステムを持参しました。劇場空間では地味なパフォーマンスだったかもしれませんが、今回は非常にリラックスした良い状態でパフォーマンスできました。決して適当に演じた訳ではありませんが、余計な力が入っておらず、淡々とシステムを組んだ今回のパフォーマンスは、自分自身も観客の視点に近い客観的な聴覚に基づいてパフォーマンスできたように感じたのです。
今回のようなドシンとした態度は、IAMASというホームグランウンドも関係しているかもしれませんが、夏から新しいパフォーマンスを模索して挑戦を続けてきた一つの現れかもしれません。今後、自分はどんなパフォーマンスができるようになるのか楽しみです。
OMMF2018を終えて、抽象度の高い作品を意識して展示しましたが、来場者からの反応が鈍く、「本当にこれで良かったのだろうか」と思う時間が多かったです。勢いや目立つことが優位な社会背景を受けて、Maker Faireへの問題提起のつもりで展示しましたが、他の展示を見ていると来場者を笑顔にする展示の方が素晴らしいようにも思えるのです。
しかし、そのように考える時間の中でも確かに届く瞬間があると嬉しいものです。とある女性は体験自体は地味でもNB-606が「日常の中のささやかな風景」に着目して綺麗に展示していることに感動したと感想を言ってくださいました。また別の来場者は、僕のZIneを見て彼女の企画するイベントへの参加を誘ってくださいました。今回の展示を通して、少ない人数ではありますが、僕の活動が誰かに届いている感触を確かめることができました。
ブース展示という環境の中では短い時間でコンセプトや面白いポイントが伝わる方が強いですが、少しづつでも粘りつよく活動を継続することが大切でしょう。石の上にも3年!ということですね。
また今回の展示で印象的だったことは、隣のブースのKaseoさんがずっと展示ブースで立っていたことです。僕は来場者の少ない時間帯は他の展示へフラフラしていたので、Kaseoさんの一人でも多くの来場者とコミュニケーションを取ろうとする態度から反省することも多くありました。Kaseoさんは長い休憩時間の時は展示物に布をかけて休んでいることを明示していて、展示しているか・していないかわからないよりは良いと思いました。今後のMaker Faireでは僕も真似しようと思います。終
参考URL
1.スペキュラティブ・デザイン
https://boxil.jp/beyond/a4954/
2.Kaseo
https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/455/
3.美術室の壁穴#2
http://oshimatakuromemo.tumblr.com/post/166044509759/
4.NxPC
http://nxpclab.info
5.CLUB TRAIN 2016
https://www.facebook.com/events/1245851155487028/
6.谷浦朋文a.k.a世紀マ3
https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/554/
7.サウンドパフォーマンス・プラットフォーム2018
https://www.iamas.ac.jp/activity/spp2018/
8.Fab Meetup Kyoto vol.24
https://mtrl.com/kyoto/events/180328_fab-meetup-kyoto-vol-24/
9.エムノ
https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/497/
10.Makers Bazaar Osaka 2018
http://makersbazaar.jp
11.教材自作部
https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/541/
12.加藤明洋
https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/534/
13.ヒョロ・ちび・wife
https://www.iamas.ac.jp/ommf2018/maker/518/