ランナー・イン・ザ・ダーク
ランニングが自分の日課になってからもう5年くらい経つ。初めは運動不足解消くらいの気楽な気持ちで始めた趣味だったけど、いつの日か、私は走る事に救いを求めていた。
昼間、仕事で色々な人と話す。その時、頭で思っている言葉が上手く口に出てこない。そんな言葉たちは夜になっても消えない。
そしてその時の言葉たちが、澱の様に心の底へ日に日に溜まっていく。心のキャパシティはいつの間にか、澱が積み重なって、小さく、狭くなっていく。
やりたかった事を仕事に出来ている。しかも食べる事には困っていない。盛大な贅沢をしなければ、それなりの生活を送れるくらいの蓄えもできた。
それなのにこんな事を思ってしまう私は、ただの贅沢者なのだろう。
そんな考えに、言葉に、頭が埋め尽くされた時、私はただ川沿いを走るのだ。
真っ暗な川沿いの堤防道路を、ただひたすらに。
戦後に水害対策で整備された川は、真っ直ぐに流れている。そんな歴史が書かれた看板の横を走り去るのは、何回目だろうか。
何も考えずに走っている、でも気づくと涙が溢れてくる。私は目を瞑る。するとたちまち、頭の中にあの時の言葉たちが浮かび上がっては、消えていく。そして、心の澱が少しずつ無くなっていく。
この言葉で、声で、私はみんなを元気にしたいって思っているのに、その言葉で私がやられてしまったら意味がない。
ただひたすらに走り続ける。頭の中に響く言葉が無くなるまで。
ランニングを始める前は、どうやって解消していたんだっけ。昔は色んなことで悩んでいたけど、もっとしょうもない事で悩んでいた気がする。これが大人になるって事なのかな。
なら、大人になるだけ損だ。
ふと空を見上げると、月のない空に綺麗な星空が広がっていた。
あ、流れ星。
そういえば今日は、何か流星群が見れるんだっけ。誰かが言ってたな。
夜に流れ星を見ながら、誰にも邪魔されずランニングできるなら、確かに大人も悪くないのかも。前言撤回で。







