文字、言葉、絵など、伝達、交流手段のほとんどは視覚聴覚を通して生まれたものであり、
私達は多くの場合、視覚聴覚を通して五感を理解し感情を変化させています。
もし視覚聴覚以外の五感である嗅覚味覚触覚から
文字、言葉、絵のような原始の伝達、交流手段が生まれ
それらを元にしたコミュニケーションを取っている世界だったなら
私達はきっと文字、言葉、絵では語ることのなかった感情を覚えていたでしょう。
あるいは現在
視覚聴覚越しに五感を体感するのではなく、五感をフラットに体感出来るなら
むしろ嗅覚味覚触覚を通して五感を体感出来るなら
私達の生活は、コミュニケーション方法は、価値観は根底を覆すほどの可能性に満ち溢れるでしょう。
今回の展示はそういった考えのもと行った、視覚聴覚過多の現状に対する私なりのアンサーでありアンチテーゼです。
展示空間の中央には人肌のような外皮をまとったVAPEが44体並べられています。
VAPEにはそれぞれ違う人間の体液のリキッド(味)が入っており、
来場者はその中から1体選び、選んだVAPEのテスターを、人間を味わう体験が出来ます。
この展示のメインはVAPEであり、来場者にVAPEを通して選択した人間の官能的情報を摂取する、人間とコミュニケーションを取っていただくことが狙いです。
展示空間は私の仮想世界であり、VAPEはその世界の住民であり商品です。
VAPEにはそれぞれ名前があります。名前は参加作家の名前をアルファベットにし、各文字を頻出度順に整理して一定の法則に従い、多国籍的な文字列を選出しました。
その文字列が44単語出来たので、VAPEを44体作ることにしました。
VAPEは大きく分けて4つの種族があり、我々が想定したマジョリティ順、人気商品順で並べられています。
来場者がVAPEを選ぶことによってその投票の1週間分の集計が次の週の展示空間に反映されます。
これは、人種の勢力関係や支持率の入れ替わりが量販店の人気商売不人気商品の配置関係その入れ替わりに似ていると思ったためです。
展示空間自体は入ってすぐの位置から見た全体像が1番写真映えするようになっており、
逆に他の位置から全体像を撮影しようとするとライティングや配置の関係で構図がうまく決まらなかったり平面的に見えたり全体像を撮影しづらい構成になっています。
ただ同時に写真映えする場所からは会場奥に設置された醜悪な展示物は一切写らないようになっています。
1番写真映えする場所を撮影していただき画像に残したりsnsにアップすることで、1番綺麗な見た目で視覚的なアプローチをしている構図だけが残り蔓延し、
来場者に作られた虚構の真実からなるインスタレーションが視覚情報として拡散されるようになっています。
今回の展示で私は視覚聴覚以外からなる感情や体験を提示したかったので、視覚に対する私なりのアンサーとしてこのような構成の展示を行いました。
私達は普段から当たり前のように視覚聴覚を使ったコミュニケーションや日常のインストールを行っていますが、
もし五感のうちの視覚聴覚を抜いた官能的な感覚でもコミュニケーションや日常のインストールを行えるなら
私達の日常生活や価値観そのものもいっそう多様で様々な感情が押し寄せる豊かなものになるでしょう。
私の望む、日常そのものを芸術的に感じる、コンプレックスをポジティブに変換するものがそこにあると思っています。