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Breaking Bad
お久しぶりです。いやはや最近忙しくてですね...。呼吸器内科は落とすし、GEfILのプレゼン&レポートもあるし、研究もあるし...。そういえばこの前、Endgameを見ましたが最高でしたね。あともう一回見ようかな...。
-以下ネタバレ注意-
今日はこの1ヶ月Netflixで見ていたBreaking Badについて。といっても、もう色々な考察サイトがあるので特に言うこともありません。ココとかココとかwikipediaとか分かりやすい。Final Seasonを見ている最中は「Walterはどこで道を間違えてしまったのだろう」と思ってましたが、Felinaを観て分かりましたね。Walterは道を間違えたのではなく、むしろ"本当の自分"をそこに見つけていたのでした... 。HeisenbergはあくまでもWalterの内に潜んでいた闇を引き出す触媒に過ぎなかったのだなぁと。
R.I.P. Heisenberg
190213-15
なんとか生きている久留宮ソーダです。13日には吐気と下痢で食欲を失い、薬剤師に薬を処方してもらいました。14日はなんとか起きておかゆを食べながらレクチャーを受けたり。そんなことしてたら少しずつ体調が回復し、14の夜にはみんなで火鍋を囲むこともできました。
15日はfinal presentationを行い、あとは観光。最後の最後にどうしても行きたかったSiriraj medical museumにも行けたので良かった。やっぱりいろいろなことに手を出すのも楽しいけど、自分のバックグラウンドである医学が一番楽しめる気がする。
そんなことでタイのステイも今日が最後。2週間は意外とあっという間だった。公衆衛生の課題シリーズは今回でおしまいなわけだが、やはり最終回はこちらでしょ。「タイの食べ物には注意しましょう」。お疲れ様でした。
処方してくれたおくすり。
190212
今日はお休み。早朝にChiang Raiを離れて、またバンコクへ。その後はチェックインしてお寺巡りをした。夕飯はSiam Paragonへ。これでSiamのショッピングセンターはだいたいまわったかな…?
汚いチャオプラヤ川。ココナッツみたいなのも浮いてるよ…。
190211
今日は受け入れ先のMae Fah Luang大学の見学。明日は卒業式で王族が来るらしい。明日は朝早くにまたバンコクに戻るので大変だ…。
さてタイのtraditional medicineをゲットした。こういった昔ながらの治療は西洋医学と一緒に行われてるらしい。漢方みたいな感じか。身体の中の悪い熱を追い出してくれるとのことだが、はたしてどういった薬理作用が期待できるのか気になるところではある。
190210
今日はMFUでレクチャーを受けた後、Doi TungやTham Luang Caveといった観光スポットへ。特に洞窟に関しては、サッカー少年たちが閉じ込められてから1年もしないうちに観光スポットへ変貌してて凄かった。午後はゴールデン・トライアングルを見た。ミャンマーとラオスとの国境を一望できる圧倒感は格別。
さて、このゴールデン・トライアングルはかつて(今でも?)ケシの栽培で有名だったらしい。ここらへんに住む民族はみんなオピオイドなどを嗜んでいたとか。また首長族もここらへんの民族とのこと。世界の秘境みたいなところに来た気分である。このような民族たちは、タイ国民としてのサービスなどをきちんと受けているのかは気になるところである。
この体勢で吸うのがいいらしい(博物館にて)
190208/09
今日9日の早朝の便でChiang Raiに向かう必要があり、昨日はドタバタしてしまった。昨日は主にMoPHでレクチャーを受けた。Chulaのマスターの学生と交流する機会があり、一緒にフリーマーケットをまわったりした。その後、夕飯はCabbages & Condomesで頂いた。
今日は朝からChiang Raiをまわった。ここではMSMのエイズ対策を担っている団体や、地域の病院、そしてヘルスセンター等を見学した。特にヘルスセンターでは、タイ従来の治療法をいかに西洋医学と併せて使っているのかということも、身近に見ることができて良かった。
この2日間で共通していたテーマはSTIであろう。性の多様性が認められているタイでは、AIDSに悩まされている人が少なくない。Cabbages & CondomesやNGOなどが、コンドームの使用を呼びかけているのはこのためである。ただこれらの問題が明るみに出てるのは、いわやる性的マイノリティの権利が保証されているからだとも言えよう。彼らの人権が法律などで保証されない限り、彼らの実態は日の目を浴びることがないのである。
いろいろなサイズのコンドームを配っていた
190207
今日はホントは早く起きて、Wat Phoに行くはずだったが絶起した。残念。午前のレクチャーはタイにおける貧富の格差について。タイの歴史や政治情勢にも目を向けると、なかなか改善が難しいことが分かった。午後は日本大使館に行ったりスラムに行ったり。夕飯には"あの"8番らーめんを食べて、夜は頑張って洗濯をかけた。
バンコクにおける貧富の格差はものすごい。とある統計によるとバンコク市民の2割がスラムに住んでいるという。特に移民が多いとか。実際スラムを見てみると、カンボジアやミャンマーから来てる人が多かった。皮膚病を患った犬が歩きまわり、狭い路地をバイクや赤ちゃんが一緒に通ってる様子は印象的だった。またデング熱やLeptospirosisなどの感染症も流行っているらしく、感染症の対策も必要になってくるだろう。
スラムの端っこ(中はあんま写真が取れなかった…)
190206
今日は午前からレクチャー。WHOのreginal officeの偉い人に会って、健康に関する政策などについて聞けた。午後は重金属中毒について調査をしている博士課程の学生さんのお話。そろそろデータがすべて集まるので、論文を完成させられるとか。その後は大学に残りたいらしい。医学部を出て公衆衛生に進み、アカデミアに残ろうとしてる人ってあんま見かけない気がする(気のせい?)。
しかしバンコクは車が多いのに信号がほぼない(写真は交通整理する警官)。歩行者用の信号とかまだ見かけてないレベルで、みんな道路を勝手に横断している。ただ車は車でめちゃんこ速いので、これまたタイミングが難しい…。てかこれでは交通事故も多そう…。
190205
今日は朝からIOMのオフィスへ。その後IOM管轄のクリニックを見たり、Chulaの人体博物館に行ったりした。IOMでは移民の健康問題に対してどんなことをやっているのか教えてくれたが、やっぱりここでも資金に苦労してるっぽい。Rohingyaがマレーシアに逃れる際にタイを通ることから、難民問題が発生しやすいというのも印象的だった。
観光はJim Thompson`s Houseへ。現代にも残るブランドを作ったスゴい人物が、旅行先で行方不明になって消息が分からないっていうミステリーにはちょっとビックリした。
IOMのクリニックでは結核の診断を行う部屋などを見せてもらった。部屋のあちこちをよく見ると、HEPAフィルターを搭載した空気洗浄機?があったり、患者を即時に隔離できるようになったりしてて、そこらへんの日本のクリニックよりしっかりしてると感じた。タイでは結核の患者が今でも少なくないとか。クリニックのラボの方ではcultureとかもしてるらしいが、今は工事中とのことで入れなかった…。
エレクラをここでやるのもありかもね。
190204
今日は朝から授業。まずは移民のイントロみたいな感じでした。タイは移民が多いらしい。授業やってるFaculty of Public Healthの建物はいかにも東南アジアって感じがするとこです。授業のあとはNGOをやってる日本人の話を聞いたり、街をブラブラしたりしました。夕飯はやよい軒で。日本食美味しい!
ところでタイの水道水は飲めないです。タイの人でもペットボトルの水とか飲んだりしてます。今日はかき氷食べたんだけど、大丈夫かな…?写真は私が気に入ったお水。
190203
さて、いよいよタイ1日目です。朝5時にSuvarnabhumi空港についたら、9時すぎぐらいまで空港で時間つぶしてました。事前に買ったsimも無事にactivateできて一安心。その後はタクシーでMBKへ。またこのショッピングモールがでかくてやばい。学生寮には14時にチェックインだったので、それまでjatujakのweekend marketを観光することにしたのですが、人が多くてほんとヤバかったです。タイって感じ(語彙力)。学生寮にチェックインしたあとは、目をつぶった瞬間に夜になってました…。
さて今回も1日1つ何かを紹介していきたいと思います。コペンハーゲンのときはリアルな生活シリーズをやりましたが、今回は当初の目的が公衆衛生を学ぶといったことであることもふまえて、タイの公衆衛生事情を(できれば写真と共に)伝えていきたいと思います。
ということで今日の公衆衛生事情はコチラ。「PM2.5等による大気汚染」。バンコク市内ではほとんどの人がマスク、それもガスマスクみたいなやつをつけてます(N95ってやつらしい)。原因は排気ガスとか。今回は空港から市内まで写真のようなタクシーを使ったのですか、こんなのが大量に走ってるので排気ガスがめちゃんこやばいって訳です。市内の空は常に曇っててどんよりとした感じ。ヤバイ日には近くの建物すら上の方が見えなくなるとか……。
タイFW
久留宮ソーダの帰還。みなさん、お久しぶりです。羽田空港のスカイラウンジからお届けしています。
実は今夜からタイにフィールドワークをしに行きます。土曜日にちまちまやってたワークショップの一環で、タイの外れの方(スラムがあったり感染症のアウトブレイクが過去に起きていたり)にも行くので楽しみです。まぁこういった機会がないと、そもそもそんなところには一生行きませんしね。
タイに行く準備の中で最も大変だったのは予防接種です。まず私は麻疹の抗体価が低かったので、11月にワクチンを打ち直しました(ちなみに、その前にはB肝とインフルエンザも打ってましたが)。これが大変で、麻疹のワクチンは生ワクチンだったのです。なのでそこから1ヶ月は何も打てませんでした。さて外務省がタイへの渡航者に推薦しているのは、主にA肝とB肝、破傷風のワクチンです。B肝は学部の方でコツコツ打ってたので、タイまでにまずA肝(エイムゲン)を打つことにしました。また前回破傷風のワクチンを打ってから10年経っており(破傷風のワクチンは10年しか持たないという報告がある)、幼少期には経口ポリオしか打ってなかったことからDTP-IPVも打つことにしました(これは、従来の経口ポリオでは抗体を作ることができなかったサブタイプにも対応していると言われる)。さらに今回は辺境に行くこともあり、狂犬病のワクチン(ベロラボ)も打ちました。ベロラボは1本1万円と非常に高く、しかもそれを3回打つ必要があり、その上効果もそれほど長くは持たないため非常に渋かったです。ただ今回行く地域では、去年狂犬病のアウトブレイクが起きていたので打つ英断をしたという経緯です。
B肝の3回目もタイに行く前に打ちたかったので、結局エイムゲン2本、ベロラボ3本、DTP-IPV1本、ヘプタバックス1本の7本をタイに行くために打ったのでした。どれも不活化ワクチンだったので一週間おきに次々と打っていきました。実際はさらに、ベロラボは保健センターでは扱っておらず新宿の国立国際医療研究センターまで行く必要があったり、B肝ワクチンの費用を教務に負担してくれるよう交渉したりみたいなこともあったので予想以上に大変でした…。まぁでもなんとか今日に間に合ったので、あとは思う存分タイを楽しんで来たいと思います。それでは。
2018年
今年も残すところあと30分となったので、まとめるやつをやりたいと思います。
学業の方では、基礎医学をひたすらつめこむ1年でした。解剖に、生理に、病理に、衛生に....。合計200枚ぐらい書かされたレポートの中でも、毎日夜まで図書館にこもって書いた生理のレポートは特に印象に残っています。夏にはCopenhagenでglobal healthを少しかじったりもしました。またちょっとした研究も病院の方で始めてます。基礎医学やったり臨床やったり、時には社会医学もやったりして、"頭の中に学問の地図を描いている"みたいな1年でした。どんなことが分かってなくて、どういったことを世界中の人が明らかにしようとしているのかってことが分かるのが面白かったです。
アマプラではPOIやSUITSと言ったドラマもたくさん見ました。YouTubeでは日本人だと、とくに兄者のアサクリOrigins、弟者のWolfenstein2やDetroit: Become Human、三人称のDying Lightあたりですかね。その他MuselkたちやAnthonyPit、Macie JayにGodlyNoob、Mr. Fruit、jackfrags、最近はPewDiePieも。CopenhagenではEvan Braddockを朝と夕方に必ず見てましたね...。
来年からはそろそろ進路を意識しださないといけません。ただそれでも今年のようにいろんなゲームをやって、いろんな動画を見て、楽しくのんびりとやっていきたいなと思います。(2018年プレイしたゲームについては限定公開の動画にまとめました。気になる人は探してみてくださいZm2ybKEEc_o)
マイクロバブルと超音波を用いた記憶の制御
*こちらは今年読んだ一番好きな論文2018の19日目の記事になります。
こんにちは、久留宮ソーダです。この「今年読んだ一番好きな論文」企画への参加は今回で2回目となります。昨年はDIYバイオに関する論文を紹介しましたが、今年はもっと自分の専門である医学よりの論文を取り扱いたいと思います。ということで今回紹介する論文はこちら!
Szablowski, J., O., Lue, B., et al. (2018). "Acoustically targeted chemogenetics for the non-invasive control of neural circuits".Nature Biomedical Engineering. 2:475-484.[1]
この時のNature Biomedical Engineeringの表紙も飾った論文です(↓)。Caltechの(あの)ShapiroLab.から出ているので、知っている人は知っているかもしれません。Shapiroは今年1月にAcoustic reporter genes for noninvasive imaging of microorganisms in mammalian hostsという論文をpublishし、natureの表紙を飾ったことでも有名です(こちらに関しては日本語で紹介もされています)。[2] ShapiroLab.では非侵襲的なimaging & controlを主に研究しているのですが、今回は後者のcontrolに関する論文を見ていきたいと思います。
超音波を用いてベクターの目的地を指定する
医学研究におけるホットワードの一つに「遺伝子治療」があります。最近は11月に、中国で遺伝子編集された赤ちゃんが生まれたらしいということが大きな話題にもなりましたね。病気の中には、一部の細胞の遺伝子に変異が入ることで生じてしまうものがあります。そのような遺伝子を人為的に編集してしまうことで、病気の治療を試みようというアプローチが「遺伝子治療」です。この編集の方法はいろいろとあるのですが、代表的なものとしてアデノ随伴ウイルス(AAV)を利用した遺伝子導入が挙げられます。これは導入したいDNAをプラスミドとしてAAVに持たせ、AAVに目的の細胞にまでDNAを運んでもらうという方法です。AAVがどのような細胞膜上受容体を認識するのか調節すれば、どのcell typeに遺伝子導入するのか設定することまでできます。しかしながら、これでは遺伝子発現の空間的なcontrolがまだまだできません。例えば「脳の海馬or黒質だけに◯◯を発現させたい!」と思っても、AAVはあらゆる神経細胞に感染してしまうようにしか設計できないので、神経系全体で◯◯が発現してしまうのです。そこでShapiroらはこの空間的な発現制御を、彼らの十八番である超音波で実現できないかと考えました。このアイディアが非常に面白いです。
microbubblesでBlood-Brain Barrierに穴を開ける
現在、医療現場では血管の造影剤としてmicrobubblesが活用されています。これは気体をリン脂質等で包んだμmオーダーの単なる泡なのですが、中に空気が入っている為その表面で超音波が反射することができます(固有音響インピーダンスが異なるため)。またこのmicrobubblesはサイズごとに共鳴周波数が異なるこということも知られており、1点に集中するような超音波(Focused Ultrasound: FUS)を特定の周波数に固定してmicrobubblesに当てるとこれを巨大化させることも可能です(詳しくはコチラ)。[3] Shapiroらはこの技術を応用して、microbubblesをその内径が血管径を超えるまで巨大化させれば、血管の内皮細胞を内側から押し広げ内皮細胞間に隙間を作ることができるのではないかと考えました。特に脳の血管でこの現象を起こせばBlood-Brain Barrier(BBB)に穴が開き、その穴を通してAAVを空間特異的に神経細胞に感染させることができるかもしれないという訳です(下図)。えっ、めっちゃ雑!果たしてそんなことは起こるのでしょうか…?
今までの流れを整理するとこんな感じに。ちなみにこの画像は別の論文から引用したので、分かりづらいかもしれません...。[4] ただ意外といろんな人が似たようなことに注目してるんですね。
マウス海馬特異的にmCherryを発現させてみた
ShapiroらはプラスミドDNAをパッケージしたAAV9とmicrobubblesをマウスに静注し、その上で海馬に集中するように1.5MHzのFUSをかけてみました(別の論文によれば、1.5MHzのFUSをかけるとmicrobubblesの直径が4〜5μmとなり、これは脳内の毛細血管の内径とちょうど同じぐらいっぽい)。[3] そして数週間後に、切片を作成しmCherryが目的の部位で発現しているのかチェックしてみました。その結果が以下の図におけるcおよびdです。FUSを当てた部位は、aにて白い矢印で示されているところになります。ちなみにbはMRIで撮影したT1強調像で、FUSを当てた場所がほんのりと白くなっているということを示しています(つまりT1緩和時間が短いということです。これはFUSを当てたところではcavitationという泡の発生/消滅も同時に起きており、この現象によりmicrobubblesを構成する脂質類がばらけているからだと考えられます)。cやdからは、確かにaにて矢印で示されているところを中心にmCherryが発現していたことが読み取れます。またAAVを投与したけどFUSをかけなかったというcontrolがeです。このeと比べれば、遺伝子発現のspatial controlが成功していたというのは一目瞭然でしょう。
論文のFig. 2より。ちなみにc,d,eがちょっと青っぽいのは、核をDAPIで染めているからです。
これではまだn=1なので、次にマウス5匹で同様の実験を行ってみました。その結果をまとめたものが下図のaです。先ほどはざっくりと蛍光を見ただけでしたが、今回は細胞ごとに解析してみています。dはdorsal、vはventralの略称である他、CTXはcortexを意味しておりthalamusと同様にcontrolです(=FUSを当てていない)。縦軸はmCherryを発現していた細胞の割合だと思ってください。aのグラフからはdCA2やdCA3、vCA3では50%以上の細胞でmCherryが発現していたことが読み取れます。一方でCA1や歯状回(DG)ではあまり蛍光が見られませんでした。何ででしょうね(論文中では特にその要因について触れられていませんでした。血管からの距離とか?)。bはその切片の画像です。mCherry出てますね。
論文のFig. 3より一部抜粋。bで青いのはDAPIで染めた核です。
更に恐怖記憶の制御までしてみた
Shapiroたちは蛍光を見ただけでは満足しませんでした(私だったらhappyってなって実験終わりにしちゃいそう)。(遺伝子導入の効率はあまり高くないかもしれないけど)ここまで海馬特異的に遺伝子を発現させられるなら、海馬の主たる機能である記憶形成をcontrolできるのではないかと考えたのです。彼らが注目したのは恐怖体験です。まず今まで通り、マウスにAAVとmicrobubblesを投与し海馬にFUSを当てます。ここでBBBに穴が開き、うまくいけばAAVが海馬の神経細胞に感染するはずですね。AAVに入れたプラスミドはhM4Di-mCherryをコードしており、これがCaMKIIaプロモーターの下流で発現されるようになっていました。hM4DiはCNOというケミカルが結合すると、Giシグナルを活性化して神経細胞を脱分極させる受容体です。またCaMKIIaはexcitatory neuronにおいて発現しているタンパク質です。ゆえに今回デザインしたAAVは海馬の中でも特に興奮性神経細胞にhM4Diを発現させ、CNOが投与されるとこれらの細胞が脱分極するという仕組みになっているのです。なおこの際FUSを当てないマウスもcontrolとして用意しておきました。
こうして準備したマウスを6〜8週間育てた後、CNO or 生理食塩水(2018/12/20 トカイワインさんのご指摘で訂正)を投与してから恐怖体験させました(下図a参照)。この恐怖体験ではマウスをContext Aに置きながら電気ショックを与えます。そして24時間後再びマウスを同じContext Aに置いた時、前回の電気ショックの恐怖体験が記憶として形成されているのか確認するという訳です。もし記憶が形成されていれば、マウスはfreezingと呼ばれるじっと止まった状態に陥ります。その結果を示したのが下図bです。グラフにおいてCNOが−となっている場合では生食を投与しています。また縦軸はfreezeしていた時間の割合です。このグラフからCNOを投与してexcitatory neuronを抑制したマウスの方が、CNOを投与していないマウスよりfreezingの時間が短いということが分かります。さらにShapiroらはマウスに恐怖体験をrecallさせた後に、これらのマウスを別のContext Bに移してその行動を観察するという実験も行いました(Open Field Test)。その結果がcです。cからはCNO投与の有無に関わらず、マウスの活動性は変わらないということが読み取れます。また、そもそもFUSを当てていないcontrolのマウスを用いた実験結果がdおよびeに示してあります。これらのマウスでは、freezing時間の短縮やOpen Field Testにおける活動スコアの減少などは認められませんでした。つまり、FUSを用いた遺伝子導入は確かに恐怖記憶の形成を抑制したと言えるでしょう。
論文のFig. 5より。
超音波を用いた遺伝子導入の時代へ?
以上の流れをまとめてみましょう(下図)。まず導入したい遺伝子をプラスミドに乗せ、これをAAVにパッケージします。そしてこのAAVとmicrobubblesをヒトやマウスに投与し、遺伝子を発現させたい脳の領野にFUSを当てます。するとBBBに穴が開き周囲の神経細胞にAAVが感染します。その結果、空間特異的に目的の遺伝子を発現させられるという訳でした。また今回紹介したhM4DiとCNOのシステムのように、現在ではケミカルによって遺伝子の発現やタンパクの機能をON/OFFできます。これを利用すれば、導入した遺伝子が薬理学的作用を発揮するタイミングもコントロールできるのです。もしこのような遺伝子導入システムが医療として実現できれば、Parkinson Diseaseのような神経変性疾患がいとも簡単に治るようになるかもしれませんね。
論文のFig. 1より一部抜粋。ちなみにDREADDとはa Designer Receptor Exclusively Activated by Designer Drugの略(長い!)。
もう少し詳しくメカニズムを知りたい!というような人は是非論文を読んでみてください(論文自体11ページもあったので、実際いくつかカットしている部分があります)。
ところで私がこの論文に出会ったのは今年の11月でした。Deisserothが講演をするために大学に来てくださったのですが、その際ゲストスピーカーとして一緒に招かれていたのがShapiroでした。実習が意外と長引いてしまいお目当てだったDeisserothの話は聞けなかったのですが、その代わりShapiroの熱烈な講演は全て聞くことができました。今回の論文もその講演の中で紹介されていたものです。面白いと感じる人やモノとの出会いは、実は全くもって予想していなかったところにあったりするのだなって思ったりもしました(でもDeisserothの講演は聞きたかった...)。
参考論文
Szablowski, J., O., Lue, B., et al. (2018). "Acoustically targeted chemogenetics for the non-invasive control of neural circuits".Nature Biomedical Engineering. 2:475-484.
Bourdeau, R., W., Lee-Gosselin, A., et al. (2018). "Acoustic reporter genes for noninvasive imaging of microorganisms in mammalian hosts”. Nature. 553:86–90.
Tung, Y. S., Vlachos, F., et al. (2011). "The mechanism of interaction between focused ultrasound and microbubbles in blood-brain barrier opening in mice". The Journal of the Acoustical Society of America. 130(5):3059-67.
Hsu, P., H., Wei, K., C., et al. (2013). "Noninvasive and Targeted Gene Delivery into the Brain Using Microbubble-Facilitated Focused Ultrasound". PLOS ONE 8(2): e57682.
うまる医学
*こちらはみゅーもり Advent Calendar 2018の17日目の記事になります。
←16日目 18日目→
みなさんこんにちは、久留宮ソーダです。みゅんカレの記事読んでると結構プログラミング系が多かったりするので、私はもうちょっと医学っぽい話でもしようかと思います(tumblrだとソースコードをsyntax highlightingしづらいというのもありますが)。といっても私は1日分しか枠をもらっていませんし、医学ノータッチの人でも分かりやすいような記事を書くとなるとテーマ決めが結構難しい。そこでみんな大好きうまるちゃんを医学的に考察してみることにしました(n番煎じな気もしますが)。名付けて「うまる医学」。
うまるちゃんは劇的に変身する
wikipediaによるとうまるの血液型はAB型。身長は干物妹時は40cm、美妹及びUMR時は160cm。年齢については分かりませんでしたが、荒矢田高校に通っていることから15~18歳かと1。うまるちゃんの凄いところは、この160cmから40cmへのドラマチックな変身を一瞬にしてこなすところ。並大抵の人間にはこなせません。今回はこの変身がいかにして凄いのかという観点を切り口に、うまるの身体内における恒常性維持の仕組みに迫りたいと思います。
うまるは見えないところでたくさん排泄している
さてうまるちゃんの体積は劇的に変化する訳ですが、その質量はどうなのでしょうか。いくらうまるの身体が凄いといえど質量保存の法則には従うはずです。厚生労働省による「平成28年国民健康・栄養調査」には、日本人女性の年齢別平均身長および平均体重がまとめられています。この統計を見てみると16歳の女子の平均体重は51.2kgとなっていました。ゆえに外うまるの体重もおそらく50kg程度だと考えられます。しかしタイヘイやぼんばは家うまるをやすやすと抱き上げたりしているではありませんか。少なくともタイヘイの外見からは彼が筋肉モリモリには見えないため、家うまるは割と軽いのではないかと推測されます(〜10kg?)。では外うまるの体重(〜50kg)-家うまるの体重(〜10kg)=約40kgはどこへ?私たちは体内の老廃物を除去するために普段から排泄を行います。その他Evaporation(汗腺からの蒸散)やRespiration(呼吸)等といった慢性的な除去手段も持ち合わせていますが、40kgほどのまとまった量を体外に排出するためには排泄が最も効率的でしょう。ですのでうまるちゃんは実は帰宅する前にたくさん排泄して、家うまるへの変身に備えているのかもしれません....(勿論アニメや漫画には映せないのでカット)。
うまるの変身は自律神経系が制御する
うまるちゃんが変身する時は全身が一斉に縮みます。ゆえにこれらを制御する上位のシグナルが存在することは確かです。ヒト体内における細胞間の情報伝達は一般に、神経伝達、ホルモン、サイトカインの3つで行なわれます。この中でもっとも伝達速度が速いのは神経伝達であるため(Ia線維で80〜120m/s)、うまるの変身はおそらく中枢神経系からの命令によって起こっていると推測できます。中枢神経系から遠位に情報を伝える神経は運動神経と遠心性の自律神経がありますが、変身時には内臓にも分布しているような後者の神経繊維が使われている可能性が大きいでしょう。ここでふとうまるちゃんを見返してみると、家うまるも外うまるも頭蓋骨の大きさはあまり変わっていないように見られます。この観測事実もまた、うまるのホメオダイナミクス(動的に維持される恒常性)に中枢神経系が大きな役割を担っているということを示唆しているのかもしれませんね。
うまるの体細胞はテロメラーゼを発現している
今まではうまるが縮む事実のみに注目してきました。しかしうまるは巨大化もします。40cmだった家うまるが160cmの外うまるへ一瞬にして変身するのです。こうなるともう訳が分かりません。ただ身体が一気に巨大化すると恒常性が危機に瀕します。例えば、表皮の組織構築が疎である為にstratum basaleのtight junctionが十分に機能しなくなります。すると体内から水分が外に漏れ出してしまう他、細菌やウイルスが経皮感染するようになってしまうことでしょう。骨も骨密度が低いため骨粗鬆症みたいな感じになっているはずです。更に腸管上皮のtight junctionも崩れてしまえば、腸内細菌が循環器系に乗りエンドトキシンショックに陥ることでうまるの生命が脅かされてしまいます。しかし外うまるは水泳などの運動が抜群にできますし、皮膚も膿だらけではなくツルツルで、何より変身の度に救急搬送されていません。ゆえにうまるの体細胞は、巨大化の際に組織構築を再構成することが可能なのだと考えられます。
私たちの体内では組織や器官が大きさを増す時に、細胞の体積を増やす肥大と細胞数を増やす過形成の2つの現象が起こります。うまるの場合は少なくともタテに4倍も伸びており、細胞の表面積にも限界があることなどを踏まえると、おそらく過形成が起こっているのではないかと推測しました。また幹細胞のみが分裂するのでは時間がかかる為、あらゆる体細胞が恒常的な分裂能を獲得している可能性があります(e.g. 骨細胞や筋線維も)。過形成において体細胞は細胞分裂を行い2倍,4倍,8倍...とその数を増やしていくのですが、実は体細胞も無限に分裂できるわけではありません。細胞が分裂する時はゲノムDNAも複製されて娘細胞に渡されるのですが、その際両端にあるテロメア配列がどんどん短くなってゆくのです。分裂を繰り返しテロメア配列がなくなってしまうと、体細胞は分裂を止めてしまいます(ヘイフリック限界)。これでは幹細胞の分裂能もいずれ失われてしまう為、そのような細胞では通常テロメラーゼと呼ばれるテロメア配列を維持する酵素が働いています。おそらくうまるの体細胞でもこの酵素が発現しており、絶えず分裂することが可能になっているのでしょう。
まとめ
うまるちゃんは見えないところで大量に排泄している
うまるの変身は脳(視床下部?)が自律神経系を介して制御している
変身の信号が自律神経を通って末梢に到達すると、神経終末から放出されたneurotransmitterが体細胞に作用し萎縮or過形成を促す
うまるの体細胞ではテロメラーゼが発現している
なんか迷走してきたのでここらへんで終わりにしたいと思いますが、「うまる医学」はそれほど難しい(ガバガバな)学問なのです。しかし、うまる医学を研究している人が非常に少ないというのもまた事実です(Google先生によると私以外に「うまる医学」を掲げている人は0人)(それはそう)。誰かうまる医学を引き継いでくれる人はいませんかね....。このままでは単なる1人の医学生が、うまる医学の未来を背負っていることになってしまいます。
それでは皆さん良いうまるライフを。
*補足
うまるは中学生であると提唱している人も存在します。かなりcontroversialなところですね。