自身の結婚式配信で「一生に一度」の投げ銭(スーパーチャット機能)を解禁し、一夜にして2億のご祝儀を稼いだ世界一のゲーム配信者、加藤純一。Yahoo!ニュースや地上波テレビでも取り上げられているのを見て加藤純一を知った人も多いだろう。
2022年3月12日、東京・寺田倉庫はクレーンカメラ、音響設備、照明等のあらゆる機材が揃った環境が整えられていた。挙式はラジオパーソナリティ・やまだひさしの尖った進行で恙無く進められ、ダルビッシュ優、HIKAKIN、博多華丸などYouTube界のみならず芸能界、球界の著名人から多くのお祝いビデオが寄せられた。一方、式の核を担ったのが「音楽」だったのは、長年の視聴者(通称:衛門)であれば心から納得のいく構成だったと言えるだろう。
加藤純一は1985年生まれ千葉出身の男性で、2009年ニコニコ動画に投稿した「ポケモン6画面で一気にクリアしてやんよ」というコントローラー1つのみでポケモンシリーズ『サファイア』、『ルビー』、『エメラルド』、『リーフグリーン』、『ファイアレッド』、『ファイアレッド』をプレイする動画でその人気に火をつけた。この頃はまだ医療従事者として働きながらの活動であったため、本名を伏せ「うんこちゃん」として顔も出さずに活動していた。
この時に自身が”にんげんっていいな”を替え歌したのがPart3でのOP曲『やんよ』である。これがうんこちゃんと音楽が手を組んだ1打席目と言えるだろう。
これ以降、ゲーム実況中や雑談のなかでも様々な替え歌を生み出していく。
プライベートでコンサートに行くほど、「ドラクエ」作曲者のすぎやまこういち氏を敬愛しており、他にも玉置浩二のことも好きすぎて「玉置浩二を聴く枠(=放送)」がとられることもしばしば。
音楽系でハネた企画のひとつに、2017年の「ハネウマライダー選手権」というのもある。
2017年より歌手のオーイシマサヨシと共にニコニコ生放送の公式番組「オーイシ×加藤のニコ生☆音楽王」を開始、2018年のニコニコ超会議ではオーイシマサヨシのステージに登場し、ギターを練習していた加藤と2人で”夏色”(ゆず)の弾き語りを披露。そしてオリジナル番組テーマソング”ドラゴンエネルギー”をパフォーマンスし、大きな盛り上がりとなった。その時のコメントも20万以上投稿されるという大反響で、多くの衛門の記憶に残っている。
ここまでに紹介した動画はその13年の歴史のほんの一部にしか過ぎないが、それでも見てわかることは、うんこちゃんはずっとインターネットで人気を博し続けていること。もちろん、テレビに一発出るのと、ほそぼそとインターネットで活動し続けること、どちらが知名度があるか?と言われれば、テレビに分があるだろう。
しかし2009年からのインターネット活動は、世間が思っている以上に影響力のあるものであると証明したのが今回の結婚式だったのではないだろうか。以前自身が生配信で言っていた「『知ってるひとは知っている』でいい。渋谷のセンター街を歩いて、たくさんの人混みに中の一人が俺に気づいて、持ってるタピオカを落としてしまうような、そんな存在でありたい」と言っていたのも納得である。
普段は衛門に毒を吐く彼ではあるが、衛門のことを誰よりも理解している当本人であるのは、今回の投げ銭に対して「みんながみんな裕福で投げてくれているわけではなく、身を削って働いて得たお賃金の一部を頂いていると理解しているし、感謝している」というコメントにも現れているし、生配信にコメントを投稿する衛門は視聴者数のたった数%でしかなく、コメントしない人たちの中には、家事をしながら聴いてくれるひとや、長距離ドライバーがお仕事中に聴いてくれているのも知っているよ、と配信中に発言していたことから、この長年で気づかれた衛門とうんこちゃんの関係性が垣間見れる。
自身が世間から「障害者差別」や「女性差別」とバッシングを受けたときも、生放送で視聴者のコメントを拾いながら考えた先に行き着いた答えが「わかってくれる人だけ、わかってくれればいい。見たくない人は見なくていい」だったのも、うんこちゃんだからこそ導き出せたものであった。
そんな彼の、彼なりの筋の通った生き方に多くの人が共感している。その延長線上に、今回の結婚式があった。そしてその道程の側にはいつも「音楽」が添えてあった。
オープニングでは4人組ロックバンドのMOSHIMOが"Jun Bride"というオリジナルソングを披露。加藤純一のために書かれた曲というだけあって脳筋パワーマックスな歌詞が話題に。歌詞の《直接食べるな マヨネーズ》というのは以前、加藤は長時間配信でカロリーを消費してしまい痩せてしまうためマヨネーズをそのまま補給していたことに由来する。(MOSHIMOのボーカル・岩渕とは公式番組などで交流を深めていた)
次に、後輩のもこうによるピアノの弾き語り”春よこい”(松任谷由実)である。以前「もこうの時間」というOpenrecの公式配信でもピアノの弾き語りを披露したが、練習不足からか最後まで弾くことができなかった。しかしその時とは比べ物にならないほどの上達を遂げ、あの始まりのメロディーが始まるとグッと込み上げてくるものがあった。そして2番の歌詞を口笛に変えていたのも、もこうらしさが炸裂するワンシーンであった。(当初は「2番の歌詞は失恋を連想させるから」口笛にしたのでは?との憶測が広がったが、後に本人の放送で「歌詞が覚えられなかったから」であることがわかった。なお、会場では口笛は小さすぎて全く聞こえなかった模様)
そして、長年公式放送を共に作り、今も「ピザラジオ」を作っている加藤の大先輩・オーイシマサヨシのまさかのオリジナルソング"幸せチャンピョン"。
《せめて今日だけは祝わせて/これからもよろしく僕らのヒーロー》とインターネット・ヒーローを祝福し、公私共に支え合ってきた二人の友情を感じる一幕に加藤も新婦だけでなく会場を感動の涙で包んだ。
衛門であるAwesome City Clubのボーカルatagiが登場し、紅白出場も果たした”勿忘草”をオーイシとの弾き語りでデュエット。レアすぎる組み合わせがこんなところで実現するなんて、いやこの場だからこそ実現し得たデュエットと言っていいだろう。
最後には、2018年のニコニコ超会議を彷彿させる”ドラゴン・エネルギー”を加藤&オーイシでパフォーマンス。お互いのために存在するかのような二人の姿を見て、その関係を羨ましく感じた。
この13年間、彼はインターネットという大海原で、その道を切り拓き、手探りに人間関係を構築し、時には裏切り、裏切られてきた。それでも「俺はインターネットチャンピョンになる」と声高らかに宣言したあの時から、うんこちゃんはただ真っ直ぐに私たちをリードしてくれる。その愚直なほどにまっすぐで人間臭いうんこちゃんだからこそ、インターネットヒーローであり、彼こそがチャンピョン、だからこそ私たちはこれからもうんこちゃんについていく。