良い流れができて、なんでもできる状況にワクワクしていたんですね。けれど、僕も自身のレーベルTABOOを立ち上げて、菊地凛子さんとのRinbjöも ありましたから、全然作曲する時間がなかった。そこへ、これはなかなか企んでできることじゃないんですが(笑)、長い間僕のパートナーというか A&Rという形でぺぺ・トルメント・アスカラールの創成期や、あと活動休止してもうやらないつもりだったDCPRGを復帰に持っていった張本人で ある高見一樹という人がおりまして。彼はイーストワークスエンタティンメントを退社して、世界中を飛び回るA&Rからある日突然、浪人状態に変 わったんです。それは非常に、羨ましいとこというか、社会的なものを捨てる勇気がないとできないことですが、彼はそれを選んだんですね。で、まあ今作は彼 のA&Rではないですから、たまに会ったりはしていたくらいの付き合いで。で、ある日高見君から「MIDIを始めました」というメールが来たんで すね。
- なるほど、そこで今回の共作につながるんですわけですね(笑)。
そうなんです。はじめはその一言だけが送られてきて。胸がざわついたんですね(笑)50過ぎた男がMIDIを始めると。まあ今はMIDIも敷居が低 くなりましたし、高見君はもともと音楽の素養もありますし、大変な音楽マニアですから。趣味で始めたのかな、と、思う一方で胸のざわつきは抑えられず (笑)。そうしたら数日待たずして、「こんなの作ってみました」というメールが来たんですよ。決してdCprGへの売り込みをかけるという態度ではないわ けです。「お暇だったら聴いてみてください」と。で、メールには作品が添付されてるんです、もう5曲も(笑)。これは、2つに1つだなと思ったわけです。 中年男が始めたカワイイMIDIを友達として聴かされるのか、あるいはひょっとして……と。
- で、聴いたらそれが見事に……。
後者だったわけです。もちろん荒削りなんだけど、作風のしっかりした、作曲家として完成されたものだったんです。で、即決で、こういうものを逃して は駄目だと思ってるんで。で、dCprGのアルバム用に僕があと3曲作曲する予定だったんですけど、やめて、高見君に3曲くれと(笑)。
- それが、『JUNTA』と『PLSF(PAN LATINA SECURITY FORCES)』と『IMMIGRANT’S ANIMATION』ですか。
そう。僕と高見君で3曲ずつ、そして作風の対照的なそれらを滑らかにするためにパーカッションソロに詩の朗読を乗っけたもの(『VERSE1』〜 『VERSE3』)という内容になった。僕が高見君の曲に施したのは、普通のプロデューサーがする仕事というか、曲のポテンシャルを引き出すブラッシュ アップだけですね。作業としてはほんの少しです。で、たまたま高見君の曲も僕の曲もM-BASE(Macro Basic Array of Structured Extemporization。スティーヴ・コールマンやグレッグ・オズビーらが提唱したジャズのスタイル)だったんですが、先ほど高見君は決して売り 込みできたのではないと言いましたが、送られてきた曲がすべて完全にdCprGの楽器編成なんですね(笑)。「これdCprGの新曲じゃないの?」って返 したら、「アレ?そうなってます?」と返ってきて、これは完全にとぼけられたなと(笑)。
- そのまま使えるようになっているんですね
だから、どうしようとか言ってる場合じゃないという。彼、すごい量を作ってるんですよ今。今もまさに作業中じゃないかな。もう、デビューしたてのフォークシンガーみたいに(笑)
- 涌き上がってくるんですね。まさに初期衝動ですね。
一日中やってるんですよ。朝来て、亀に餌やって、シリアル食って、夜まで作曲やって、飲みにいって、寝てという(笑)。
インタビュー:菊地成孔 前編 2015年5月27日
DCPRGからdCprGへ、混沌から構築へ。好機を捉えた新作を語る
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/%E9%9F%B3%E6%A5%BD/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%EF%BC%9A%E8%8F%8A%E5%9C%B0%E6%88%90%E5%AD%94-%E5%89%8D%E7%B7%A8