tomad<いつぞやのlost decadeのこととか>
気づけば、早稲田の茶箱でmadmaidの「too mad to fuck」を聞いてから5年以上が経っている。
あのとき、パーティが終わって偶然DJ WILDPARTYと東西線早稲田駅で乗り合わせたりもした。
あのときのWILDPARTYは普通に就職しますよ、と答えていた気もする。
しかし、それから何年も経って、彼はどこの大箱小箱でも見る日本でおそらく有数のプロDJになり、
(確か雑誌のインタビューで、そうなろうと決めたのは3.11があったからかも、と話していたような)
僕の好きなアニソン「get along」のremixの話をいつかの茶箱でしたtofubeatsの活躍はいうまでもなく、
okadadaさんはより、なんというか、セックスシンボル化し、
(と言ってしまっていいのかわからないがいいか。10周年のmaltine bookでもアイドルと写真とってたし)
そのDJの間違いのなさはより正確無比になっていることは言っておいて、
肝心のtomadは・・・なんか自分の中では、あまり変わらない。
その日、5/12日、イベントの赤字分を払い続けて金欠の自分をlost decadeに行かせたのは、
FNMNLのロスディケに関する四人のレジデントの対談だった。
そこには、今の音楽のシーンに対する4人の見解が見事に浮き出ていて、
スマホでそれを見ながら何度も頷くことが多かった。
http://fnmnl.tv/2017/05/10/29663
SNSとディスコ的クラブミュージックの楽しみ方、
そして4年後のためにやっている、4年後のために音楽を選んでいる、という意気込み、
そんなイベントがロスディケなのだ。深い意味のある、ただ踊るだけで楽しいパーティなのである。
いつものように、恵比寿駅から降りて、歩く途中にある、お世話になってるなじみのクラブ、
「BATICA」に挨拶をする。スタッフのみんなは俺が行くパーティのことを知っている。
IDを見せて、受付を済ませたとき、昔BATICAに呼んだ。CUSTOMSのhojo君がいる。今日本にいるなんてな。
「彼はVJのスケブリの予約だよって言ってますよ。」と受付に伝えて、扉を開ける。
どんどん下に降りてくる。地下に降りていく時のこの感覚が、特にUNITが好きな理由だろう。
最初の代官山UNITは覚えている、10年以上前のclub snoozerだ。
クラブで会う顔に知り合いが増えたのも、自分の長い来た証拠だと思う。
イベントを続けてよかったと思う時だ。
しかし、自己暗示のように「もう若くないから・・・」とつぶやいてきた呪いで、
昔ずっとclub snoozerで朝までいた時のように、朝までクラブにはいれなくなった。
体力が、というより、単純に飽きっぽくなったのか、なんなのか。
今回も、ラストまでいることはないな、と思った。
これからいろんな知り合いが、楽しそうに来ると思うんだけど。
まだ最初のtomadのときは、人間の量はそれなりだ、と思っていたら、
案外もうきっちり人で埋まっていて、まったくさみしくなかったと、記憶している。
バーカウンターでは、よくクラブにいるメンツが、いつのように楽しんでいる。
でも不思議と客層は、若いというわけでもなかった。
自分と同じくらいの女子2人組だとか、マルチネのイベントとかでは見ないタイプの男女連れもいた。
どちらかというと、そういった人には、今回のゲスト、KEITA SANOを見に来てる人が数人いたようだ。
tomadの、初夏のようなbpm120前後のダンスミュージックが終わった後、KEITA SANOが始まる。
その、大鉈でぶったぎったような繋ぎにはいささか面食らったが、
ぶっといテクノ・ハウスサウンドに激しい喝采と、激しい踊りがささげられた。
その次はtofubeatsだ。彼のセットは、いつも非常に彼らしい。
直前のKEITA SANOのbpmとほぼ同じテンションを勿論キープしながら、
物語が続いているように音楽が流れていくが、自身の曲、「shoppingmall」へと、そのアシッドテクノ版(ヴォーカルはピッチダウン)
ともいえるリミックスへと流れていく。彼を一側面を規定づける、現世への痛烈なディストラックともとれる曲が、
踊りの快楽をまとって流れていく。
そこから自身の、まさに「you make me acid」から、強烈なアシッドがフロアに鳴り響き、ハードなトラックが続くこの展開だ。
「やっぱ、tofubeatsにとって、アシッドは業なんっすね」
俺もいつの間にかビール一杯とスミノフアイス一本程度で酔っ払い、
誰かにそんなことをぬかしていた気もする。
でも、「dont stop the music」でも、あの中盤のアシッドがtofubeatsの曲をtofubeatsらしくしている、
そんな気がするのだ。
そのあと、ややアシッドの耳触りを取り去るような曲が流れたと、
あの印象的なイントロが流れ込んできた。
滅茶苦茶に叫び倒しながら最前へと向かう俺がいた。
「もうこの曲を3回は今日聞くからな!!!」
チャラ箱であるまいし。しかしとにかくこの予期されていたかのようなピークポイントは、
俺にとってこのイベントの絶頂だったし、ある意味金を払った分の対価をもはやすべていただいたような
そんな瞬間だった。
tomadがmvに出てくる踊る中年サラリーマンの真似をしてる。へらへら笑っていた気がした。
しかしその予定調和のピークポイントを更新する術を持っているのがokadadaだとわかったのが、
彼がまさかのこの曲をドロップした時だ。
絶頂につぐ絶頂とはこのことを言うかというくらいの盛り上がりがあった。
ほぼほぼ踊りながら気絶してしまったかのように、そのあとのことは、あまり覚えいない。
せっかくの今日のlost decadeのTシャツを赤く汚してしまったtomad。
robot rockが流れたときに一緒に突撃したラウンジネオのスーさんとBounce upのhasさん。
物販で話したfuezの面々。そしてそこで寝ていたけしーさんとか。
激しく踊る、名前も知らない女子たちの一瞬一瞬。数々のカップルのキスシーン。
この、自由な気分。そして、もはや回りは明るくなって、
一人でロッカーの超過料金を払って、代官山駅から家へ帰ってゆく。
その瞬間のすべてをナイトライフというのだろう。
ロストディケイドが今後デイタイムになるかもしれないし、
そんなことは一観客の俺が図りうることじゃない。
その、図れないtomadの趣向こそ、俺がいつも彼を信頼していることだし、
FNMNLでtofuたちの語る、tomadのアンチ・予定調和な趣向を、
出来上がったユートピアを破壊し、そのピアを終わらせないことを選ぶ彼の、
見る目線を見たいだけなのだ。
彼の定点観測、lost decadeを、俺はしかと見届けた。
【 tomad】
インターネットレーベル「Maltine Records」主宰。2006年頃からラップトップを使ったDJ活動開始。都内を中心にLIQUIDROOMやUNIT、AIR、MOGRAなど様々なクラブでプレイ。
2009年から都内のクラブにて年数回のペースで自身レーベルのイベントオーガナイズもしている。
最近「LOST DECADE」の10回目を代官山UNITにて行ったばかり。彼のDJは簡単な予定調和を拒否し、更なる快楽と混乱をアップロードするのだろか。