生きていくことの困難はもはや,人生が残酷だとか苦難に満ちているとかあまりに短いとかいったことではない。近年,厄介なのはむしろ,人生が心地よく,かつわずらわしく,あまりに長くなったことなのだ。
リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』
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生きていくことの困難はもはや,人生が残酷だとか苦難に満ちているとかあまりに短いとかいったことではない。近年,厄介なのはむしろ,人生が心地よく,かつわずらわしく,あまりに長くなったことなのだ。
リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』
サンドイッチひとつに6ドルも使えるようになる唯一の道は,もっと小ぎれいな店なら7ドル取られるという事実を知ることだ。
リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』
−−−何が欲しいんです? −−−何も欲しくなんかない。俺に対してあんたが礼儀正しくふるまえばいいんだ,おたがい人間同士として。じゃなきゃこんなこと,まるっきり意味がなくなっちまう。 −−−あなたがそうして欲しいんなら,礼儀正しくふるまいますけど。 −−−俺がそうして欲しいんじゃない,あんたがそうならなくちゃいかんのだ。それも,公示にそう書いてあるからじゃなくて,あんたがそうしたいと思うからじゃなくちゃいかん。 −−−礼儀正しくなることはできますけど,礼儀正しくなりたいと思うことはできません。ほかに何かお望みは?
リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』
希望を持ったり,絶望したり,予想したり,油断したりしてはならない。決して降伏はせず,今までの生活でやってきたのと同じように,分岐し,増殖し,変身し,結合し,行動し,耐えること。 火事を必要とする種子がある。冷凍を必要とする種子もある。いったん口から飲み込まれて,消化液に浸されて,排泄される必要のある種子もある。叩き割らなければ発芽しない種子もある。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
突然に,ニックはメイデンヘアーの言葉の意味を理解する。40億年の生命の歴史で,最も驚くべき存在が助けを求めている。 それは樹木ではなかった。人間のことだったのだ。あらゆるものからの助けを求めていたのは。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
死因は理想主義。世界が間違っているときに,一人だけ正しかったことが彼の死因だ。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
もっと一生懸命に見ておくべきだった。愛が足りなかった。刑務所行きになる程度には愛したのだが,今日を生き抜けるほどには愛していなかった。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
私たちは何を勝ち取ろうとしていたのか?自然は失われた。森は,化学的に維持された植林地に変えられた。40億年の進化がたどり着いたのがこんな場所だ。政治的にも,実際問題としても,感情的にも,知的にも,大事なのは人間だけ。究極の語彙は"人間"。人間の飢餓を抑えることはできない。その勢いにブレーキをかけることさえできない。ただ現状を維持するだけでも,人類に許された限界を超えている。 来るべき大量殺戮は人間自身が承認したことだ
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
法律は単に,人間の意志が言葉として書き留められたものだ。法律は生ける地球を隅々までアスファルトで覆うだろう。--もしもそれが人々の欲望であれば。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
内なる意志を結集すること。今までに生きた人生の記憶を総動員すること。正しいことも間違ったことも,頭の中に保持する。真実はおのずから明らかになる。シンプルな信念以上に力強いものはない。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
世界のために人ができる唯一最善のこと。彼女の頭にひらめく。"世界"という言葉こそが問題の始まりだ。この言葉には2つの正反対の意味がある。本当の意味の"世界"は私たちには理解できない。私たちはでっち上げた方の"世界"から逃れることができない。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
初めに万物があった。間もなく,何もなくなる。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
「木はいわば科学を実践しているのです。十億の実験を実地で行っている。樹木は未来を推測して、何がうまくいくかは生きる世界が教えてくれる。生命の世界は推論(スペキュレーション)で、推論(スペキュレーション)は生命なのです。何て驚くべき言葉なのでしょう!スペキュレーションには"思索"という意味があります。それ以外に、"鏡に映す"という意味もあります」
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
「少しでもうまくいく可能性がある戦術はすべて、いずれかの植物が過去4億年かんの間に試しています。私たちは今ようやく、"うまくいく"というのがどれほど多様な意味を持つのか気付き始めたばかりです。生命というのは、未来へ語り掛ける方法なのです。それは記憶と呼ばれます。あるいは遺伝子と呼ばれます。未来という問題を解くには、過去を保存(セーブ)しなければなりません。ですから、手っ取り早い考え方はこういうことです。つまり、木を切るときには、少なくともその木よりも驚異的なものをつくるのでなければならない」
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
「人は理解できないものを見ることができない。しかし、既に理解していると思っているものには、往々にして気が付かない」
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
「昔からずっと、木は人間に語り掛けてきた。正常な人間にはそれが聞こえていた」。唯一の問題は,再び樹木が口をきいてくれるかどうかだ。すべてが終わる前に。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
彼女は今,自分が昔から自然を好きではない理由を思い出す。自然界にはドラマがない。展開もないし,希望や恐怖のぶつかり合いもない。ただ,枝分かれし,もつれ,込み入ったプロットがあるだけ。登場人物もとても覚えていられない。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』