本屋の隙間
20時頃、会社帰りに寄るその本屋にはいつ行っても5歳くらいの女の子がいた。 小さな子ども用の椅子に座って、平積みにされている絵本を読んでいる時もあれば、本屋大賞と帯のつくミステリを読んでいる時もあった。
「ねぇ、それ子供には早いよ」と思わず声を掛け、小さな手から本をそっと奪った。 官能小説の棚の前にいたその子は不思議そうな顔でこちらを見上げている。 「読んでも分からないでしょう」 「しってるじをさがしてるの」 なるほど、本を読んでるわけではないのか。 「他の字を、教えようか?知りたければ」 冷たく聞こえたかと思ったが、小さく頷いた。 「じゃあ絵本にしよう」
一体この子はどんな生活をしているのか、そう思ったが私には重荷過ぎる予感がしてすぐに考えるのをやめた。 本屋の店主も似たような感じだったのかもしれない。
小さな女の子と35歳の私は、並んで絵本を開く。店主が小さな椅子を持ってきてくれた。 本屋は流動的で不完全だ。 だからこそ、その隙間は柔らかく私達を包んで、世界は私達の為にあると思わせてくれる。
書・空豆 /tw@soramamejiros












