2026-6月号
アンビグラム作家の皆様に同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室 室長)です。
『アンビグラム』とは「複数の異なる見方を一つの図形にしたもの」であり、逆さにしたり裏返したりしても読めてしまう楽しいカラクリ文字です。詳しくはコチラをご参照ください⇒アンビグラムの作り方/Frog96
◆今月のお題は「Set up」です◆
今月は参加者の皆様に「Set up」のお題でアンビグラムを制作していただいております。なかなか難しいお題であると評判の今回でしたが、素晴らしい作品をもって無事にセットアップできました。 じっくりとお楽しみください。
「準備」 旋回型
:れおじゃぱん氏
「準備」とは、物事を始める前に、必要なものをそろえたり、態勢を整えたりして、すぐ取りかかれる状態にすることです 。また、単なる物の用意だけでなく、計画や段取りを整える意味でも使われます 。
いくつか作例がある題字ですが、本作は熟語の力を信じた素直な作り方ですね。書体と崩し方のバランスがよいからか、「十」のひずみもあまり気になりません。
「準備中」 敷詰鏡映同一型
:兵士氏
「準備中」とは、準備の途中で、まだ整っていない状態を指します 。店やサービスでは「まだ開けていない」「まだ対応できない」という意味で使われることもあります 。
縦横に敷き詰めると鏡映軸が現れます。二重線などの工夫もあり、どの文字も自然に読めますね。「亻」が大きく違う形なのですが旁がしっかりしているので読めてしまいます。
「準備完了。」 回転重畳型
:給食だより氏
「準備完了」とは、必要な準備がすべて終わって、すぐ始められる状態という意味です 。会話では「もう行ける」「始められる」という合図として使われます 。
作者得意の角字風の書体。既知の対応である「準備」はさすがに読みやすく、「完了。」と句点をつけることで密度差を解消し、きれいに収まるようにしています。
「準備万端」 回転同一型
:lszk氏
「準備万端」とは、必要な準備がすべて整っていて、いつでも始められる状態を表すときに使われますが、「万端」はあらゆる事柄を表す言葉なので「準備万端整う」と使うのが無難です。
字形を面でとらえる技術が発揮されています。「万端」の区切りの作り方がすばらしく、対応先の「備」の方を見ると不自然さがないのが不思議です。
「準備運動」 旋回型
:のこぺ氏
「準備運動」とは、運動やスポーツを始める前に体を温め、動きやすい状態に整えるための運動です 。けがを防いだり、筋肉や関節をスムーズに動かしたり、パフォーマンスを出しやすくする目的があります 。
こちらも面でとらえたステキな作字ですね。ちょっとだけ適切なスリットを入れることで各文字を特徴づけていて、とても読みやすいのがすごいです。
「アッパードロー」 旋回型
:てるだよ氏
「アッパードロー」は弓道において、引き始め(セットアップ)のときに矢先が水平より上を向いたまま弓を引く状態を指す言い方です 。一般には望ましくない形とされ、危険性もあります。
作者らしい、かわいらしい書体でよい作品ですね。「ッ/゛」も「パ/ロ」も書体の性質を生かした技巧的対応で、読みやすいのに驚きます。
「設定」 回転同一型
:コムコム氏
「設定」は、物事を新たに定めることおよびその定めた事柄です。または、機器やソフトウェアを使える状態にするための一連の設定・準備作業を意味します 。
「設」がそのままの字形である一方「定」がかなり崩れた形になっていますが、左側は割としっかり字形を保っているので読みにくくはありませんね。
「初期設定」 旋回型×2
:Jinanbou氏
「初期設定」とは、ソフトウェアやハードウェアを初めて使うときに行う最初の設定、または出荷時に最初から決まっている設定状態のことをいいます。
Data70の雰囲気もある書体がステキです。よく見るとこの書体は対応付けの細かいギミックを生かすためのものだと分かりますね。「期」は省略されていますが読めるよい形です。
「機能更新」 図地反転鏡映同一型
: いとうさとし氏
「機能更新」とは、主に Windows で使われる用語で、OS に新機能を追加したり、既存の機能を変更・強化したりする大型アップデートのことです 。機能更新は適切なタイミングで準備、実行され、セットアップが完了します。
さすがの仕上がりです。「機」が強い字形なので、かなり変形しているようでも特徴をとらえていれば読みやすくなります。「能/更」もかなりすごいことをやっていますね。
「設営」 旋回型
:gryfis氏
「設営」とは、施設・建物・会場などを前もって設備し、準備することです 。主にイベントや行事などで、円滑に実施できるように会場や設備を物理的に整える作業を指します 。
少しの回転で二つの文字が対応付けできるのはすごい発見ですね。変形のさせ方が大胆で、面白い作品です。
「設置」 鏡映式旋回型
:Σ氏
「設置」とは、ある物を特定の場所に取り付けたり配置したり、施設や機関などを設けることです 。単に「置く」とは異なり、機能させるために適切な位置や方法で据え付けるニュアンスが含まれます 。
形でとらえて読ませるデフォルメ、大胆な「殳」がよいですね。「罒」は「訁」を横にしただけなのに不自然さがありません。物理的に設置されるためにあるような立体的なデザインがかっこいいです。
「敷設」 敷詰振動回転同一型
:大豆氏
「敷設(ふせつ)」とは、線状の設備(コード類)やインフラを地面や構造物に敷くようにして広い範囲に設置することです。
正方向にみて重畳型(敷詰振動型)になっているのと同時に、敷き詰めたものは逆方向から見ても同じ形です。すばらしい気づきと技術です。実は「殳」「攵」は振動対応だったのですね。
「指紋認証」 図地反転鏡映同一型
: いとうさとし氏
「指紋認証」とは、指の指紋の模様を使って個人を識別する生体認証の一種です 。指紋は人によって大きく異なり一生変わらないため高いセキュリティ強度を持ち、重要な認証設定のひとつになります。
「指」の手へんが違うへんにも見えそうですが「旨」と合わせるとすぐに手へんに確定します。「紋/認」もきれいに字画が見いだされ、さすがの職人技です。
「テスト勉強」 図地渾然型
:結局24氏
「テスト勉強」とは、試験に合格したり高得点をとったりするために、範囲を把握して復習・暗記・問題演習を行う学習です 。計画と準備も重要です。
渾然型ではドット作字が多い印象ですが、本作では曲線で細かい調整をすることでより自然なつながりを実現しています。「テ」「ス」は裏返しのように見えつつ気にならずに読めますね。
「上下一揃いの服」 敷詰鏡映同一型
:igatoxin
「セットアップ」とは、同じ素材・同じ色柄のトップス(上)とボトムス(下)がセットになった上下一揃いの服のことをいいます。元々はスーツの分野で使われる言葉で、ジャケットとパンツ(スカート)が同じ生地で仕上げられているもののことです。近年はカジュアルウェアにも使われます。
この縦に敷詰すると鏡映軸があらわれます。この意味の作品がほとんどなかったので仕込みました。
「紅花/装い」 回転共存型
:綾織にあ氏
ベニバナの花言葉「装い」は、身なりや外観を整えて美しく飾ること、またその姿そのものを指す言葉です 。古語的な用法では「準備すること」の意味もあります。ファッションのセットアップの意味も掛かっています。
ベニバナの雰囲気も感じられるステキな作字です。文字の区切りが切り替わりますが、バランスがよく不自然さがありません。垂直水平の直線は細く、曲線は太めに揃えているのが成功しています。
「SETUP/NOUN」「SET UP/VERB」 回転共存型
:兼吉共心堂氏
「setup」は名詞(noun)、「set up」は動詞(verb)です。例えば、「setup=準備の状態・仕組み」と「set up=準備する」のような違いになります。
作者によって時々披露される英語のアンビグラムは発想と作字方法の両面で勉強になります。3個の「E」はどれも字形が異なり(E/e/ε)、英語のアンビグラムらしさが見えます。
「世界新記録」 回転重畳型
:ZOI2氏
「世界新記録」とは、ある競技において過去の記録を越える最高の記録を樹立すること、またはその記録そのものを指します 。set upに「樹立する」の意味があります。
いわゆる「初回限定盤」型できれいにおさまり、文字の読みやすさがハンパないです。随所にあるストロークのカールが絶妙です。
「IKEAの家具」 鏡映式旋回型
:あおやゆびぜい氏
「IKEAの家具」は、スウェーデン発の家具・インテリアブランドIKEAが販売する、低価格ながら機能的な組み立て式であることが特徴の家具です 。
「家」を裏返すと「IKEA」になるというすばらしい気づきです。組み立て家具に欠かせないビスやナットのあしらいがよいですね。
「さんかくかんけい」 旋回型
:kawahar氏
「三角関係」とは、3 人の人間が同時に恋愛関係に陥った状況・人間関係を指します 。物語におけるお約束の設定です。
「さ/ん/か/く/け/い」の6面対応で今回もすごいです。輪郭がにじんだような処理が効果的なのが分かりますね。
「盛り付け」 回転同一型
:lszk氏
「盛り付け」とは、完成した料理を食器に盛ること、またその盛られたものを指します 。食べる人の食欲をも左右する、食事の前の大事な準備です。
配置の不自然さもなく過不足がない見事な対応です。「戈り/付け」が気持ちいいですね。
「即興劇」 敷詰振動式旋回型
:結七氏
「即興劇」とは、台本を用意せずに、俳優がその場で自発的に演じる形式の演劇です 。設定がない状態から、設定を生み出して行く状態や過程が楽しめます。
「即興」の敷詰と「劇」の敷詰を一致させることができます。文字としても字形の面白みがありながらとても読みやすいすごい作品です。
「都市計画」 敷詰回転同一型
:とりけとん氏
「都市計画」とは、都市の将来あるべき姿を想定し、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画のことです 。
アンビグラムとは思えない自然な作字ですね。字画の切れ目の切り替わりも自然ですごいです。自然な文字に見えるようにカーブの具合も絶妙に計算されていますね。
「旅支度」 映進重畳型
:すざく氏
「旅支度」とは、旅行に出かけるための準備全般のことです。 荷物をまとめる、持ち物を確認する、行程を整えるなど、出発前に行う一連の準備を指します。
「旅」を裏返すときれいに「度」になるんですね。手書き風の書体にすることで重なりも自然に見えます。グラデーションにより字画が分かれたように感じるのも面白いです。
「無を取得」 図地反転+回転重畳型
:つーさま!氏
「無を取得」とは、様々なゲームのRTAでバグ技を行うための下準備として実行されがちな、その大元となるバグ技のことです。ステータスが壊れて強くなったり、フラグが異常値になって行けない場所に行けたり、等々、ゲーム難易度に異常をきたします。
図地反転と回転重畳を組み合わせる難しいことをやっていながらとても読みやすいです。バグって表示がおかしくなっている感もある「を」がよいですね。
「針抜け」 映進重畳型
:ちくわああ氏
「針抜け」とは、主にマリオ(スーパーマリオメーカー)によく使われる、狭い針の配置を抜けるための技です。この配置を抜けるためにはキャラクターの位置調整が重要になってきます。
映進重畳型の中でも図形領域同士が大きく重なっている作成が難しいタイプです。図解を見てすごさを堪能してください。
「にわか仕込み」 鏡映同一型
:Σ氏
「にわか仕込み」とは、一時的に身に付けたもの、必要に迫られて急いで覚えた知識や技術を指す言葉です。 本当に深く理解しているわけではないが、とりあえずその場だけやっている状態を指すことが多いです。
とてもかわいい書体で、フォントに仕上げてほしくなりますね。デフォルメが適切で、とても読みやすいです。「か/仕」など、筆の方向が切り替わるのも自然で見事です。
「明度調整」 敷詰回転鏡映同一型
:化学氏
「明度調整」は、主に画像・写真の明るさ(明度)を変える調整のことです 。暗い部分を明るくしたり、全体を暗くしたりして、見やすさや雰囲気を整えるために使われます。
適切な配置によりp4敷詰p4g同一型になります。計器や装置をモチーフにしたすさまじい作品でずっと見てしまいますね。
「ランダウの記号 O」 回転同一型
:igatoxin
「ランダウの記号」は関数や数列の漸近挙動を大まかに把握するときに使われる記法です。プログラミングにおいては計算量評価にも用いられ、効率的なアルゴリズム調整に重要な考え方です。
最後に私の作品でした。
お題「Set up」の月刊アンビグラム祭、いかがでしたでしょうか。作品をお寄せいただいた作家の皆様には深く感謝申し上げます。
さて、次回のお題は「熱」といたします。発熱、体温計、知恵熱、解熱剤、マグマ、太陽、温泉、摩擦熱、熱狂、熱意、熱湯、湯気、暖房、調理器具、耐熱ガラス、熱情の律動(リズム) など、作者が自由に熱というワードから発想・連想してアンビグラムを作ります。
締切は6/30、発行は7/8の予定です。 次回もよろしくお願いいたします。
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