夜の森は静かだった。月光が木々の隙間を縫い、地面に銀色の模様を投げかけていた。ジェルヴァジオは、太い腕を組み、岩に腰かけて空を見上げていた。彼の体は屈強で、鍛え上げられた筋肉は戦士のそれだったが、彼の内には誰も知らない秘密があった。男の体に宿る、女の生殖器。村の者たちは彼を「鉄のジェルヴァジオ」と呼び、恐れと尊敬を込めて見つめたが、彼自身はその矛盾に苛まれていた。
「ねえ、ジェルヴァジオ! 星が囁いてるよ! ほら、聞こえる?」
突然、背後から甲高い声が響いた。アルドンサだった。彼女は風変わりな女で、いつも頭上に星や宇宙の声を聞くと言っては村人たちを困惑させていた。彼女の華奢な体は女そのものだったが、彼女もまた秘密を抱えていた。女の体に、男の生殖器。アルドンサはそれを「宇宙の贈り物」と呼び、誇らしげに笑った。
ジェルヴァジオは振り返り、眉をひそめた。「またお前の電波か、アルドンサ。静かにしてくれ。考え事をしてるんだ」
「考え事? ふふ、星はね、考えすぎると魂が曇るって言ってるよ! ねえ、ジェルヴァジオ、私と一緒に星の声を聞いてみない?」
彼女はくるりと回り、長いスカートが夜風に揺れた。彼女の目はまるで宇宙そのものを映しているかのように輝いていた。
ジェルヴァジオはため息をついた。彼はアルドンサの奇妙な言動に慣れていたが、なぜか彼女のそばにいると心がざわついた。彼女の自由さ、無垢な笑顔、そして何より、彼女が自分を「普通」として受け入れる姿勢が、ジェルヴァジオの心を揺さぶった。彼は自分の体を呪った日々を思い出した。村の医者にさえ「異常」と呼ばれ、誰にも言えずにいた秘密を、アルドンサだけは笑いながら「特別な星の配置」と呼んだのだ。
「アルドンサ、お前は…自分がどうしてそんな風に生まれたと思う?」ジェルヴァジオは、珍しく声を低くして尋ねた。
アルドンサは立ち止まり、彼をじっと見つめた。「どうして? だって、宇宙がそう決めたからよ! 私の中の男の力、ジェルヴァジオの中の女の力、それって星々が織りなす物語の一部じゃない? ほら、こうやって私たちは出会ったんだから!」
彼女は手を広げ、まるで夜空を抱きしめるように笑った。
ジェルヴァジオは言葉に詰まった。彼女の言葉は荒唐無稽で、しかしどこか真実を突いている気がした。彼は立ち上がり、アルドンサに近づいた。「お前みたいな奴は初めてだ。…俺のことを、変だと思わないのか?」
「変? ふふ、ジェルヴァジオ、星はみんな違う形してるよ。それが美しいの。あなたも、私も、ただの星の欠片なんだから」
その夜、二人は森の奥で語り合った。ジェルヴァジオは自分の体を初めて恥じることなく話した。アルドンサは自分の「宇宙の贈り物」を笑いながら語り、星々が二人の出会いを祝福していると歌った。月光の下、屈強な男と電波系の女は、互いの違いを認め合い、互いの秘密を共有した。
やがて夜が明け、朝日が森を照らし始めたとき、ジェルヴァジオは初めて心の重荷が軽くなったのを感じた。アルドンサは彼の手を取り、言った。「ねえ、ジェルヴァジオ、これからも一緒に星の声を聞こうよ。だって、私たちの物語はまだ始まったばかりなんだから!」
二人の笑い声が、森に響き合い、夜空の星々は静かに見守っていた。