原発事故とロボットに関連して。安全を考えるコラムを書きました。「想定を超えた万一に備える、したたかなシステムをつくる」 #design #robot #nuclear #ITcost
想定を超えた万一に備える--したたかなシステムをつくる
*このコラムは3月29日に書いたブログ「気になるコト5つ」からの抜粋です。
1.震災で「できたことと、できなかったことを再確認しよう」①新幹線の自動停止
「震災と原発の事故を振り返って一言」として、寺島実朗氏が語った言葉。今はまだ、被災者への支援や原発の対処でそれどころではないが、そうした中でも、「きちんと実行できたこと」を明らかにしておこうというお話。一例として、地震発生時に走行していた88本の新幹線がきちんと一斉に停止したことをあげていた(注1)。
2.震災で「できたこと、できなかったことを再確認しよう」②あらゆる前提が破られる
「できたこと」で私自身が真っ先に思い浮かべたのは、福島原発のことだった。大きな事故となったが、地震発生時に作動中の発電は想定通りに停止している。事故は電源が止まり、冷却装置が働かなくなったことによる。二重三重のバックアップがすべて機能しなかった。心臓部の運用システムは想定通りに動作し、核容器も破損しなかった。しかし、電源装置やバックアップ、冷却装置といった周辺装置がトラブルを起こし、そこから想定外の動作が連鎖し、巨大な事故へとつながった。原発の事故はあまりにも深刻で重たいが、それでも、「障害は周辺部分から起きやすい」という情報システムの体験に重ね合わせてしまう。
そう思っていたところ、3月29日の夕刊で柳田邦夫氏がこれをきちんと説いてくれていた。とても大事な教え。「前提はいつか破られるもの」でその前提に対する姿勢に落とし穴があるというお話。そして、「巨大システムが崩壊するときにはそのシステムの心臓部ではなく、周縁システムが狙いうちされることが多い。事故も震災もシステムの壊れやすいところを狙う」と指摘している。
「前提はいつか破られるもの」という真実への向き合い方として、「効率主義」からの決別を示した。災害や巨大事故、薬害、公害などには効率主義は危険であるとのこと。これは言い換えれば、社会基盤となるシステム、社会に対する万一の危険を伴うシステム、あるいは、人の手を超えて大きく複雑なシステム、これらを維持していくには効率主義は合わないということだと理解した。ここで、改めて、新幹線のことを思った。JRのシステムはまさに、効率主義とは逆のところにある。最近のIT化から見れば、複雑で重たく、膨大な手間を費やし高コスト体質。人への依存もある。しかし、そこには尊い非効率もある。非効率でよいという意味ではもちろんない。価値観の明確さの問題なのだと思う(注2)。
3.社会基盤には効率主義は危険・・・原発の話で考えたこと
3で書いた「前提は破られる」「社会基盤などには効率主義は危険」という重たい教えを、原発のことでもう少し考えてみた。「効率主義だけでは済まない」ことへの最初の観点は、「もっと安全にできなかったのか?」。すでに、津波への備えが不十分であるとか、想定が甘すぎたといった指摘がある。これには「前提が甘すぎる」「前提への対処が不完全である」という2つの問題が含まれている。
その真偽、度合いは今後、公的機関で分析、評価されていく。ただ、ここで注目したのは、福島原発が古い設備であること。その長い利用期間の間に、定期的に前提を見直し、対処を見ていくことは欠かせない。建設時の前提を議論しても、意味がないはず。どれほどメンテナンスをしていても、長い利用期間に設備もシステムも劣化する。一方で、環境は変化する。利用の体験もある。
それらを反映して、「前提」を見直していくことは非常に大事。設備やシステムのライフサイクル管理の重要な一部であるはず。よって、「前提を適切に定義し、それに十分な備えをする」ことと、「ライフサイクルを通して前提条件がどう変化するかを想定し、周期的に検証、見直しをしていく」という2つの行動が必要となる。そして、もうひとつの観点は、前提が破られたときの備えがあるかどうか。「効率主義は危険」の話は、多くの場合、こちらに比重がある。「前提に対して備えは十分」だとしても、それを超えた時にどうするのか?最小限の行動はできるのか?原発で言えば、多重のバックアップが効かず、想定外の動作をした。その異常時にどういった策を講じてあるのか。「フェールオーバーがあるので絶対に大丈夫」ではなく、それさえダメだった時に、どう動くのか。
この基本は、人がシステムを代替し、解決できることだ。しかし、原発のような巨大システムや人の判断を超える複雑なシステムでは、代替不能になる。そのときに、最小限しなければならないのは何か。縮退運転なのか、被害を最小化することなのか。価値観の定義とそれにあった策が必要。原発でどこまで備えてあったのかはまだ分からない。外から見ていると、状態を人の代わりに見る画像機能(定点カメラ、上空カメラなど・・NHKの30㎞先から撮影するカメラはなぜ東電や国になかったのだろう??)、危険作業を担う無人ロボットなど、「なぜ使わないの?」と思う手段がいくつもある。
正常時の定型プロセスと障害発生時のプロセス、その2つはシステムで用意できる。まだ前提の範囲内。それを超えた時には、非常時、非定型の動作になる。まず用意すべきは、情報の収集にせよ、応急処置にせよ、人を支援する手段。人とコラボレーションするシステムではないか。このあたり、もっと深く考えてみたい。
a.新幹線については、From Sapporo Sparkle 「Wonderful topic "earthquake-proof railway system of Shinkansen"; 7 April, 2011」で書きました。8月23日に情報を付加し紹介しています。日本語版は次のコラム(Tumbler)でアップします
ttp://sapporosparkle.jp/lines/?p=370
b.話題出典;TV番組サンデーモーニング(TBS、3月27日)
c.参照;JR東日本「新幹線早期地震探知システム」関連広報http://www.jreast.co.jp/press/2005_2/20051020/no_3.html
参照;毎日新聞3月29日夕刊「巨大地震の衝撃 日本よ!」