平方イコルスン『スペシャル』を読み返しても読み足りない。それだけハマっているので深読みネタバレトークがしたい。ということで、この後書くのはネタバレ発散垂れ流し。
伊賀の頭のアレはなんだったのか
大石の屋敷の放場で握った槍と同じもので、本体とその投影像のようなものなのだと思う。3 巻の第 52 話「おる者避けず」で、大石亭の放場を移管する手続きか何かで集まった大人たちの中に、伊賀の父と葉野の父の会話がある。葉野父が伊賀(娘の方)について「(今日の手続きについて)あっ ですよねぇ 今日はご本人は」と話しており、残された槍は伊賀と頭のアレと密接に結びついたものと読める。その槍を握った伊賀は「こういう感触って他にはないねんな むちゃくちゃ貴重! 最高かも知れん…‼」とハノサヨに語りつつ頭の槍は伸びて脳にダメージが入ったような倒れ方をする。自分の脳を生で触ったような状態なのかなと感じた。放場の槍がかつてと違って部屋で 1 本 1 本区切られていることと、大石家からどこかへ移管される状況は繋がっていて、それは伊賀が倒れたこととこも重なってるのだろう。他の槍を握るとどうなるのかはわからないが、どれを握っても同じことになるような気はする。なんとなくモチーフとして落語の『頭山』があるんじゃないかとも思った。
葉野父について
同じく 3 巻の第 52 話「おる者避けず」での葉野父の会話内容から、どうやら医療機器の類の技術を持つ企業に努めているようで、会話の流れから、娘である主人公が伊賀との関係の中で悩んでいる「相手の役に立ちたい」というエゴが、そのまま父親側では無自覚に放出されていてその一方通行感がエグい。ただ、この人自身は美倉陣営とは直接的には関係がなさそう。
美倉はなんなん?
決行の日に美倉と共に行動していた実行犯が日本語(?)以外を喋るかしゃべれても拙いことと、徹底的な行動から、他国等外の世界からの工作員あるいはテロリストであることは間違いなく、美倉はその作戦の現地コーディネーター的な存在なのだろう。葉野家に家事サポートとして潜り込んだのは、葉野父の線と葉野の学校の線で伊賀に近づく任務のためだろう。第 39 話「変な知り合いには普通」で煙突の話をふって伊賀の好意を引くあたりがうまくて(これは「決行」の成功のための種まきになっている)、他にも二葉や津軽など伊賀の同級生への取り入り方も巧み。これらの行動のため学校内に共犯者が潜入していた可能性もありそう。絶体絶命のピンチに陥った葉野を延命しようとするところで泣けた。
さよ(葉野小夜子)について
さよが主人公であり、伊賀の通う学校に引っ越してきたことや、そこでさよなりに葛藤する姿、父と母との関係性、過去の回想には必然性があり、作品のテーマそのものがそこにあるけど、作品中では直接的には語られていないんだろうな、という気はしている。
美倉が葉野家から姿を消した日
この日が美倉たちが一気に動いた日と思われ、大石家では「あほ雇って逃げられたわ」と恐らく語感以上の大きな事件が起きており藤村が招集された。また美倉による津軽の引き込みも山場を迎えていたようだ。葉野家では葉野父の仕事上の何かが盗まれたらしい描写があり、同じく大石家でもそれが起こっていたのではないか。
決行日の藤村
伊賀の下校時、藤村は彼氏が迎えに来て帰ってしまった。もし一緒に下校していた場合、まず伊賀を怪しまれずに安全に葉野亭へ移動させる作戦失敗の原因となる可能性があり、また藤村の身も危なかったと思われる。美倉の用意周到さ、例えば葉野を二葉に呼び出させて「さよを巻き込まない」を考えると、藤村がこの日伊賀と別の帰宅をしていることが計算ずくであるように思える。藤村の彼氏は葉野に対する二葉のような存在と関係ではなかったか。
ラスボス
大石の祖母は「ラスボス」と呼ばれているが、この漫画に登場する他のキャラでこういった軽い略語が使われていないこと(皆漢字だ)、大石の名前が龍代(おたつさん)と呼ばれ見た目もそれっぽいと葉野がつぶやいていることから、ドラクエ的なゲームの悪役としてのラスボスをモチーフにしている可能性があって、モチーフどころかそのままである可能性もありそうな気はする。槍の「放場」が大石家にあることからも、大石家に向かって槍が降ってきた可能性はありそう。
追記・海について
4 巻第 67 話で相沢さんから申請すれば行きたいところにも行けるよと言われた伊賀が真っ先に行きたいと言ったのが海で、冬の冷たい海にテンションの低い葉野との対比が印象的だった。巻末のおまけ漫画で伊賀は恐らく冬の海辺にいて、沖には恐らく葉野たちが船でこちらを見ていて、サポートしている男性の言からこれから彼女らは会える状況であり、ハッピーエンドと言える状況なのだとは感じていたが、読み直してみてこれは最高のエピローグなのではないかと思えてきた。伊賀は煙突や放場の槍について、葉野とその素晴らしさを共有出来ないことを寂しく思っていた。海についてもお互いのテンションの落差が大きかったが、おまけ漫画のシーンは葉野たちにとっても忘れがたい冬の海となり、伊賀も含めて同じ気持ちを共有出来そうな予兆に満ちている。暗転直下の第 71 話で、相沢さんからどんな海に行きたいの?と訊かれた伊賀が「友達と行ける綺麗な海ならどこでもいっすよ」と答えていて、相沢さんは冬の冷たい海に「まぁ入れるとしても足首までだけど…」と言っていて、この時行けなかった海の情景がわずか 2P の後日譚であるおまけ漫画で見事に回収されている。あと、4 巻で(たぶん)突然出てきた「海」という場所が、もしかすると(伊賀と近しい境遇にあった)津軽の「魚はキモいが魚の社会を眺めるのが好き」という要素や、同じく津軽が猛烈に想いを寄せていた浦先生の「浦」という水にまつわる名字ともちょっと繋がってるのかなとも思った。もう一回読み返すと水に関する描写がそっとどこかにあるかもしれない(なので読み返そう)。
追記の追記
海、1 巻で話が出てきていて、波があっちとこっちからぐっと押してくるのがいいやんか、的な話があった。最終的に大石亭のプールで伊賀が水に浸かって物足りないと言いながらも満足そうに紅潮している表現があった。種が蒔かれている。