福山雅治になる方法
長野高専 電子情報工学科 伊藤祥一
Kosen Advent Calendar By Teachersへの寄稿とは思えないタイトルですが、まぁいいんです。高専の現役学生に宛てて書きました。
2005年、私は松本市にある信州大学理学部に内地研究で滞在しており、クォークとグルーオンという素粒子の力学を解き明かすための研究生活に没頭しておりました。人間と会話するより、NECのSX-8にUNIXコマンドとFortran 77で話しかける方が本気で多かったよ。人間とした会話ってのも、現秋田高専の上林先生との「~/.zshrcってどう書くの」とかそんなことなんだけど。それはともかく、8月のある夜にテレビをつけたところ、たまたま情熱大陸で福山雅治特集をしていました。Talking FMリスナーなので眠くて死にそうだったにもかかわらず見入ってしまいましたが、番組内での彼の発言がとても共感するものでした。うろ覚えですが紹介します。
「売れない時期ってのは周囲に集まる友達も売れてない連中ばかりで、一緒に飲んでいるとみんな決まって『売れることがすべてじゃない』『金だけが人生じゃない』って言うんですよ。ぼくはそれって何か違うな、と思ったんです。売れたことなんかないわけですから。」
実際に売れてみてどうでしたか、とインタビュアが続けます。
「うーん、やっぱり売れることやお金がすべてではありませんね。」
デビューから15年以上(当時)もトップランナーの一人として走り続ける人ならでは重みのある発言でした。Nigel MansellというF1パイロットはその名も「走ってない奴は黙ってろ」という本を書いています。どちらも当事者になることの大切さを言っていると思います。いますよね、「○○なんて簡単だ」とか「○○したい」とかいう人。でも「今は忙しい」とか「いや、私は」とか理屈をこねて何もしない人。簡単に言うと評論家。みんなの周りにもいませんか、こういう人。もしくは自分がそうではないですか。こういうのは楽でいいんです。疲れないし責任もとらなくていいし、他人にこういう講釈をたれていれば自分が賢い人に感じられるから。ほとんどの場合は後出しじゃんけんの発言してりゃいいんだし。しかし、真剣にそれに取り組んでいる人にとってこういう評論家は激しくウザい、というか時間の無駄。頼むからごちゃごちゃ口出しすんな。おまえが言うようなことはこっちは百も承知でやっているんだ。口出しするんだったらオレより成果をあげてからにしろ。───実際に手を動かしている人からはこう見られているのに本人は「あーあ、わかってないなぁ」などとお利口さん気取り。これはなんとも格好悪いです。
なにか行動を起こすと言うことは、成果を得られるかどうかはわからない割にリスクだけはきっちり伴います。たとえばサラリーマンを辞めて起業する人は今までの何倍ものお金が儲かる可能性がある分、倒産して破産して一家離散してホームレスになっちゃって公園で寝ているところを近所のDQNにボコられるかもというリスクもあるわけ(←心配しすぎです)。これだけじゃなくて、資格を取るとか恋人を作るとか、何事も同じです。そのようなリスクを踏まえて(リスクを考えずに突撃するのは勇敢なのではなくてただのバカです)、実際に行動を起こし、全知全能を尽くして物事を成し遂げることの大変さと尊さを知ってもらいたいと思います。何もせずに安全なところから「○○しなきゃダメだよぉ」と言っている人よりも、何倍も格好いいと思います。少なくとも私はこうありたい。行動を起こしたあと、結果だけ見たら失敗したように見えてもその過程で得られるものは何倍も大きいはずです。それの繰り返しが君たちを大きく成長させます。イチローの打撃のビデオを見てゴチャゴチャと批評しているだけで3割バッターになれますか?いや、現に4割5割打っている人が3割バッターに「ここがいけない」と教えてあげるのはいいんだけどさ。そうでないなら、素振りの一つでもした方が、100倍、3割バッターへの近道だと思うね、あたりまえなんだけど。特に学生のうちは失敗が許されます。失敗しても、失敗の影響や責任はほとんど君たちには波及しません。君たちの気づかないところで、保護者の方や先生方が強力な防波堤になってくれているからです。しかし成功したら成果や賞賛はすべて君たちのものです。なんともおいしいです。ですから、ぜひ学生のうちに実際に当事者になって、いろいろなことに取り組んでもらいたいと思います。
幸いにも、プロコンやロボコンをはじめとして、高専を盛り上げてくれようとする人々(多くは手弁当です)による、たくさんのコンテストがあります。別の場所でのプレゼンのために、学生課の前に掲示されているこの手のポスターを数えに行ったら、数が多すぎて途中で挫折したくらいです。自分が輝けそうなコンテストを探して、打って出てみたらいい。ここにはほんのちょっと、打って出ようと思ってから行動を始めるためのエネルギーが必要です。F=maって真理なんだよ。止まっているものを動かすのにはすごく力がいる。でもいったん動き出したら全然いらない。調子に乗って飛ばしているところにブレーキをかけるのにもすごく力がいる。それはともかく、それらのコンテストに参加して、いざ終わりまで走りきってみると、いかに自分が井の中の蛙だったかがわかるはずですし、そこで受ける評価や賞賛は確実に次に踏み出すエネルギーになります。コンテストはなんかちょっとなー、ハードルたけぇなー、という人は、高専カンファレンスなんかに参加するだけでもいい。参加前と後で、世界の見え方が全然違ってくると思います。あの感覚は、若いときに同伴者なしで海外を旅するのと似たものがあると思います。授業中にコソコソとTwitterに文句を垂れ流しているとか、暇さえあればニコニコ動画をボーッと見ているだけとか、他人の作ったものの上で踊っているうちに冴えないおっさんになったらつまんないよ。積分ってのは、無限小の足し算なんだよ。だから、できることならいい方向に足し上げていってもらいたいものです。そうやって何十年後かに自分の先生を超えることが、一つの恩返しなんだと思いますね。















