晩春に聴くブラームス
寒くなるとブラームスの音楽を聴きたくなる。木々の葉が色づいて気温が下がってくる時期はもちろんだが、寂しさや虚しさで冷えきった心に熱を吹き込みたい夜にも、この作曲家の音楽に耳を傾けたいと思う。情熱をほとばしらせる音楽も時には悪くはないが、抱き続ける思いを熾き火のように、炎をほのかに明滅させながら伝えるブラームスの音楽のほうが、心を内側から温めてくれる。彼の感じやすいがゆえのはにかみに、またそれが表現の独特の屈折に結びつくのに共感を覚えるからかもしれない。 ここのところ、ブラームスがヴィーンに音楽活動の拠点を定める以前に書いた作品を聴くことも多い。三十代前半までの彼が作曲した音楽には、例えば変ロ長調の弦楽六重奏曲(作品18)の緩徐楽章が示すように、情熱が豊かな歌として溢れ出る面もある。しかし、一種の反抗を示しながら内へ内へと向かうところに、彼の音楽の特徴を見ないではいられない。そのような音…
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